つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

世界はこんなに美しい

先週土曜、図書館での「読み聞かせ」は、こちらの絵本を読みました。

『きぼう(HOPE)』コーリン・アーヴェリス・文/セバスチャン・ペロン・絵/ひさやまたいち・訳)

犬のコメットは、フィンの大切な友達。

ある日、コメットが病気になってしまい、動物病院へ預けることに。

コメットのために自分が出来ることは何か、フィンがお父さんに聞くと、「希望を持つことだ。」と教えてくれる。

希望は、あたりがどんなに暗くても、一筋の光をくれる。

辛いときに希望を持つことは難しいけれど、フィンは希望を持ち続けることにした。

希望を持つと、そんなに気持ちが沈まなかった。

フィンが強く願えば願うほど、夜空には光があふれ、フィンが眠っている間にも、希望の光は、他の人の希望の光と一緒になって夜空にきらめき、町はずれの動物病院の窓に向かって流れていく。

その光は、愛するものたちに向けられた人々の願いでもある。

翌朝、コメットは元気になってフィンの元に戻って来るという、少年と犬の心温まるお話。

辛いときにこそ、希望を持つことの大切さを教えてくれる物語です。その願いはきっと相手にも届くという思いも伝わってきます。

もっと小さいお子さん向けの絵本も少し用意してましたが、年長さんや小学1年の子なども何人か来てくれてたので、この絵本を読みました。

読み終わってから、「面白かった~」とのお子さんの声が聞こえて来たので、嬉しかったのでした。(^-^)

作者のコーリンさんは、イギリスの作家。

絵を描かれたセバスチャンさんは、パリ在住のイラストレーター。

訳者のひさやまたいちさんは、『ずーっと、ずっとだいすきだよ』という、やはり少年と犬の絵本も翻訳されています。この話は、小学校の国語の教科書に載っていて知り、大好きになったのですが、愛犬に限らず、生きている時に、愛を伝えることの大切さを教えてくれるやはり心に響く話でした。

 

もう一冊読む時間があったので、お馴染みの絵本作家・荒井良二さんの『わらうほし』を読みました。

山や森、花、雲、朝も夜も、僕も私も、みんな笑っていて、読み手の私も自然に笑顔で読めてしまう、とても楽しい絵本です。

綺麗な夕焼けを見ただけで笑う、大人のページも素敵です。

 

今月は、定員制を設けているお話ルームに入り切れないほどの親子の皆さんが、部屋の外でも聞いていて下さり、ありがたかったでした。

 

* 

それから、こちらもとっても素敵な絵本を、もう一作紹介したいと思います。

『世界はこんなに美しい(アンヌとバイクの20000キロ)』(エイミーノヴェスキー・文/ジュリーモースタッド・絵/横山和江・訳)

昨年末、新聞での新刊紹介記事で知り、地元図書館で検索したら新着図書の中にあり、予約してみました。

1973年に、たった一人でバイクで世界一周をした初めての女性である、アンヌ=フランシス・ドートヴィルさんの実話です。

カワサキのバイクに少しだけの荷物を積み、パリを離れ、カナダ、アラスカ、日本、インド、アフガニスタン、と心のおもむくままに走った旅。

パリを出発するとき、アンヌの頭の中では、「一人で世界を周るなんて危険だわ」などのネガティブな声が聞こえ、でも、他のこんな声も聞こえてきます。

「静かに。道の声を聴いて。」

すると、道がアンヌに「行きなさい。」と告げます。

そしてアンヌは世界を周る旅を通して、世界中の美しさ、見知らぬ人達の優しさに触れる様子などが描かれています。

(豆知識として、キャンプの場面では、火の起こし方。インドでは、インド紅茶についての説明も書かれています。)

特にアンヌが憧れの地だった、アフガニスタンカンダハルでは、今はもう破壊されてしまったバーミヤンの巨大な仏像に登り、仏像の頭のてっぺんから、地平線を見渡している描写がとても素敵でした。

聞こえてくるのは、布がこすれる音、虫の音、それと自分の息づかいだけで、「人生で一番美しい瞬間かも知れない」と感じます。

読んでいる自分自身も、アンヌと一緒にそれらを体感している感覚になり、そのとき感じた空気や風の匂いはどんなだろうと、憧れの心地で読みました。

旅の終盤でアンヌが感じ、行きついた思い、

「世界は美しくあってほしい。そして、世界は美しかった。

人間はよいものであってほしい。そして、人間はよき人々だった。」

という部分は特に心打たれました。

世界は本来美しいものであり、個々の人間は皆よき人々であるはずだ、と、私も思います。

そしてアンヌはパリに戻り、ラストのページは、真っ赤な夕陽に続く真っ直ぐな道の絵で、

「世界は美しい。世界は思いやりにみちている。

目を閉じれば、道の声が、まだ聞こえてきます。ほんの少しだけ、とおくのどこかから。」

と結ばれています。

アンヌが旅した頃の時代とは、世界は様変わりしてしまい、危険な地域もかなり増え、今はこのような旅はもちろん難しいかも知れませんが、今の時代だからこそ、この絵本を通して、アンヌのような好奇心や、見果てぬ夢を持ち続けることは大切だと感じます。

(旅から帰ってきた直後のアンヌ)


この絵本には、旅したルートを示した世界地図やその時の写真、「日本のみなさんへ」というアンヌさんからのメッセージが記された付録がついています。

それには、楽しかった日本での数々の想い出も記されています。

アンヌさんは、72歳でバイクを手放し、現在も作家としての活動は続け、パリから少し離れた村で、猫と一緒に暮らしているそうです。

 

あらゆる世代の方の心に響く絵本だと思うので、多くの方に手に取って頂きたいです。

今月、小学校・高学年での「読み聞かせ」で読む予定なので、世界や自分の未来に思いを馳せながら、聞いてくれたらいいなぁと思います。