つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

『パッチワーク』『うまれかわったヘラジカさん』~人生を希望に変える絵本2作品

絵本『パッチワーク』

(マット・デ・ラ・ペーニャ作/コリーナ・ルーケン絵/さくまゆみこ・訳/岩波書店

~自分の人生を縫い合わせている、全ての若い人たちに~

先月末、小学5年の教室で読んだ絵本です。

先ずその教室の子たちに、「パッチワークって知っていますか?」ときいてみて、みんな知らなさそうだったので簡単に説明し、「これは、みなさん一人一人が主人公のお話です。」と前置きしてから、読み始めました。

 

あなたが持っているものは一つでなく、さまざまな色・形を縫い合わせて繋がって、豊かな世界をつくるパッチワークのように、時とともに集まったさまざまなものが合わさり、あなたという無限で美しいものになっていくというお話で、子どもだけではなく、あらゆる年代の人の心に刺さる絵本だと思います。

 

行った場所、出会った人たち、感じてきたこと、それらの全てから自分の世界を形作っている。さびしさも、うれしさも、全て。

そのような話は、今まで読んだ本などからも見聞きしてきましたが、それが優しいパステルカラーの絵とともに、子どもにとっても分かりやすく、描かれています。

 

この絵本には、人種や性格の違う、さまざまな子どもたちが登場します。

(ちなみに、作家と画家はアメリカ在住で、翻訳者であるさくまゆみこさんは、『アフリカの本プロジェクト代表』だそう。)

ダンスをするために生まれてきたようなあなたは、その頭の中のリズムが、やがてプログラマーへの道へと続き、世界を変えていくかも。

いつもボールと一緒のきみ。その弾むボールの音は、自分のさびしさを表しているのかも知れないと気づくことがあるかも。そしてそれは、詩を作ることにも繋がっていくかも知れない。

人を笑わせるのが好きで、いつも不真面目そうな態度のきみは、素敵な先生になれるかも知れない。クラスに落ち着かない子がいても、きみにはその子の気持ちがわかるし、好きになれるから。

という言葉なども、なるほどと感じました。

 

「この先、悲しいこと、苦しいことが押し寄せて、まばたきでさえ、できなくなることもあるだろう。でも、涙はピンクでもブルーでもない。なみだは、人間というしるし。そしてきみも、人間の一人。」という言葉や、

「そのパッチワークが、たとえ、ちぐはぐでも、いびつでも、もつれていても、わかりにくくても、どれも美しいものになるはずだよ。」

「わたしたちは、みんな美しいのだから。」

という、たくさんの子どもや大人の顔とともに、最後のページに書かれたこの言葉も心に響きました。


* * *

絵本『うまれかわったヘラジカさん』

(ニコラス・オールドランド作/落合恵子・訳/クレヨンハウス)

~人生を希望に変えるニコラスの絵本~

こちらは先月、2年生の教室と、図書館での読み聞かせで読みました。

【あらすじ】

森にちょっと変わったヘラジカさんがいました。

友達が色々楽しそうに遊んでしても、なんだかんだ理由をつけて遊びません。

水たまりで遊ぶのは、濡れるのが嫌。凧揚げでは、強風が嫌い。雪遊びは、寒いのが嫌だからと。

「ぼくって、ほんとうにこのままでいいのかなぁ。」

ある日ヘラジカさんはそう思い、一生懸命考えたり、インターネットで調べたり、占いをしてみたり…。

でもどうしていいのかわからなかったので、「なにもわからないのなら、何でもやってみよう。」と一大決心をし、ヨットで旅に出ます。

海で嵐に遭い、生まれて初めて嵐に立ち向かい、小さな島へたどり着きます。

そこで何とか生きていく術を見つけ、一匹のカメとも仲良しになります。

そのカメと島で楽しく遊び、今まで出来なかったことにも色々挑戦できるようにもなります。

それから大型船に助けられ、カメとさよならをして、無事、森に戻って来られ、友人たちと再会を喜び合います。

「がけから飛び込んで遊ぼうか」とへラジカが言ったので友達はもうびっくり。というお話。

 

海で嵐を克服してからは、たどり着いた島で、飲み水を探し焚き木を集め、小屋を建て、魚も取ったり…。

帰りの大型船の中でも、積極的に楽しく過ごし、どんどんたくましさを身に着けていくヘラジカさんの変身ぶりには驚きです。

一つ一つ乗り越えていくことで、自信がついてきたのが分かります。

「何もわからないのなら、何でもやってみよう。」

という、このヘラジカに勇気をもらえるのは、子どもだけでなく大人も同じだと思います。

ヘラジカさんの、何ともユニークで、とぼけた表情も可愛いです。

最後のページは、手紙を書くねとカメに約束した通り、カメへのこの手紙で終わっています。

ヘラジカさんが、今度はアフリカでカメに会える日も、そう遠くはなさそうです。

私も若い頃、清水の舞台から飛び降りる気持ちで臨み、消極的だった自分から少しは脱却できた経験を思い出しました。

 

カナダの絵本作家であるニコラス・オールドランドさんの「人生を希望に変えるニコラスの絵本」は、シリーズ化されているようなので、他にも読んでみようと思います。