つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

読書

『去年の今日』(長島有里枝・著)『いのちのパレード』(恩田陸・著)『可哀そうな蠅』(武田綾乃・著)

昨年末から年明けにかけて読み、感想が下書きに保存したままになってたこちらの三作品、今頃ですが簡単にまとめました。 『去年の今日』(長島有里枝・著) 主な登場人物は、40代後半のライターである未土里とその息子の大学生の樹木、未土里のパートナー・…

『その世とこの世』(谷川俊太郎・ブレイディみかこ/著)~自分にとって「その世」に通じる音楽

谷川俊太郎とブレイディみかこの1年半に渡る往復書簡。 『図書』連載「言葉のほとり」(2022年3月~2023年8月号)に、奥村門土(モンドくん)の挿画を加えて、昨年11月に書籍化されたもの。 字も大きく150ページほどであり、内容的にもとても引き込まれたの…

映画『哀れなるものたち』『かがみの孤城』劇団四季『アナ雪』など

映画『哀れなるものたち』 『夜明けのすべて』より、こちらの作品を先に先月観に行き、下書きに感想をざっと書き留めておきました。 www.searchlightpictures.jp (作品詳細は、こちらのサイトからどうぞ。) 自殺を図り、赤ん坊の脳を移植されて生まれ変わ…

『本を守ろうとする猫の話』(夏川草介・著)

以前読んだ同じ夏川草介さんの『始まりの木』では、よんばばさん、marcoさん、マー君のママさん、はなさん、temahimeさん、smokyさんなど、たくさんのブロ友さんが次々読んで感想をUPして下さってました。 その木の枝が伸びて繋がっていくように、またその…

『あの光』(香月由香・著)~気になった秋のあの匂い

主人公は、薄給のハウスクリーニング会社に勤める、30代の高岡紅。 とても丁寧な仕事ぶりで、顧客からの信頼が厚い。ある日水商売をしている母親からの勧めで、独立して起業を決意する。 その仕事は順調に進み、新たな事業「開運お掃除サービス」も立ち上げ…

その両親もふくめ個性豊かな『東家の四兄弟』(瀧羽麻子・著)

「この世界には二種類の人間が存在している。占いを信じるものと信じないもの。」 という冒頭の一文。 皆さんは、どうでしょう? 私は、「当たるも八卦当たらぬも八卦」というスタンスでも、どちらかというと信じてきた方でしょうか。 それは子供の頃から家…

『始まりの木』(夏川草介・著)~これからは民俗学の出番

主人公は、民俗学を研究する東々大学の准教授・古屋神寺郎と、彼のもとで学ぶ大学院生・藤崎千佳の二人。 「藤崎、旅の準備をしたまえ。」との古屋の一言から、毎回、日本各地、昔ながらの風景が残る場所へ研究の旅が始まる。 作品舞台は、第1話での青森県…

『永遠と横道世之介(上下巻)』(吉田修一・著)~読んだら世之介に会いたくなる

図書館の新刊案内にあったので、上下巻とも数か月前に予約してみた。 上巻はやっと先月順番が回って来て、下巻の方は、上巻を借りると順番を早くしてくれるようで、間を置かず続けて読むことができた。 上下巻とも分厚くページ数は多かったものの、読みやす…

田坂広志・著『教養を磨く(宇宙論、歴史観から、話術、人間力まで)』~秋祭り

著者の新書は、以前読んだ『死は存在しない』が興味深かったので、7月に刊行されたこちらも図書館で予約して読んでみた。 先月感想を書いた小説、『かっかどるどるどぅ』と同時期に借りて、下書きにメモしておいたものの、他にUPしたいことが色々出てきて後…

『かっかどるどるどぅ』(若竹千佐子・著)

芥川賞を受賞されたデビュー作、『おらおらひとりでいぐも』以来6年ぶりとなる、著者2作目の最新刊。 『かっかどるどるどぅ』とは、ドイツ語で鶏の雄叫びの声だそうだ。 6話からなる連作短編集で、登場人物5人の身の上話が、それぞれ心の声で語られていく。 …

『空想の海』(深緑野分・著)『明日も一日きみを見てる』(角田光代・著)

どちらも図書館の新刊案内にあり、予約して先月初旬に読んでみました。 『空想の海』(深緑野分・著) 11編からなる短編集。 表紙の絵は、最初の『海』の世界観を表していた。 著者の小説は初めてだけど、作品ごとに、その世界観ががらっと変わっている点が…

『美しき人生』(蓮見圭一・著)~人生とは何か?

ジョージ・ハリスンの好きな曲と同じタイトルの小説が、図書館の新着図書にあり、良さそうだったので、予約して今月初めに読んでみました。 フリーライターである阿久津哲也が、この話のナビゲーター的役割で、小説の中心となる主人公は、阿久津の息子が通う…

『ゴリラ裁判の日』(須藤古都離・著)

新刊の書評を読んで、ゴリラが主人公で、そのゴリラが裁判を起こすなんて面白そうだと思い、図書館に予約して先月読んでみた。 軽い気持ちで読んでみたら、この物語は、人間の中にある、差別意識についても考えさせられる深い話だった。 カメルーンのジャン…

『うつくしが丘の不幸の家』(町田そのこ・著)

物語の舞台は、海が見下ろせる新興住宅地にある一軒家。 各章ごとに時間を遡って、そこに住むそれぞれの家族たちが描かれている、連作短編集。 その家の住人が、様々な事情によって、僅かな年数で引っ越してしまったことにより、近所では「不幸の家」と呼ぶ…

『死は存在しない』(田坂広志・著/光文社新書)

最先端の量子科学を基にした「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」を提示し、その考えのもとでは「死は存在しない」と説かれた一冊です。 (本書をこれから読まれる予定の方は、この記事読まない方がいいかもです。) 筆者は、本書を、次のような「問い」を抱…

『いつか必ず死ぬのになぜ君は生きるのか』『歩きながら考える』~最近読んだ本

『いつか必ず死ぬのになぜ君は生きるのか』(立花隆・著) この本は、2021年4月に亡くなられたフリージャーナリストである、立花隆さんの膨大な著作の中から、「人間とはなにか」など、80年の生涯を通して立花さんが追い求めて来たテーマを中心に言葉を抜き…

『小説家の一日』『私と街たち』『私のことだま漂流記』~読書感想

最近、興味深い新書を読んだのだけれど、下書きに入れておいた感想記事で、過去読んだ分がまだ残っているので、まずはこちらの三作品から。 『小説家の一日』(井上荒野・著) 昨年末に読んだ作品。タイトルを目にして、エッセイかと思ったけど小説だった。 …

『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』(小澤竹俊・著)

「弱さ」とは克服するものではなく、「幸せへの第一歩」 ホスピス医である小澤竹俊氏は、これまで3800人以上の患者さんを看取って来たそうだ。 以前から気になっていた、著者の『今日が人生最後の日だと思って生きなさい』はまだ未読だけど、この本は図書館…

『アナベル・リイ』『タコやん』~怖い話と面白い話

『アナベル・リイ』(小池真理子・著) 今年7月に刊行された、小池真理子の長編怪奇小説。 著者のエッセイは1年前に『月夜の森の梟』を読んだけれど、小説では短編集『千日のマリア』以来久しぶりだ。 怪奇小説は、好奇心はあっても好んで読むジャンルではな…

『水中の哲学者たち』(永井玲衣・著)

(お堅い本ではありません。^^;) 昔から一つのことがらに対して、様々な人の考えを知ることにとても興味があった。人によって考え方感じ方など、モノの見方が違うことを発見するのが新鮮でもあり。 学生時代、国語の教科書での題材は、小説の一節よりも、随…

感謝の気持ちを伝えたく、Twitterに登録してみました。

普段、SNSはLINEしかやっていない私。 今までたくさんの音楽仲間から、なぜFacebookに入らないのかと登録を勧められたけれど、申し訳ないけど頑なに拒否してきた。 SNSにはまると、自分の時間が奪われてしまうし、普段から首肩の凝りが酷いため、スマホを使…

『タイムマシンに乗れないぼくたち』(寺地はるな・著)

寺地はるなさんの作品は、連作短編集が多いけれど、この作品はそれぞれ独立した7編からなる短編集だった。 作品の多くの主人公たちは、孤独感や生きづらさを抱えている。でも、ふとしたことで心が軽くなるきっかけが訪れる。 中でも私は、『コードネームは保…

『孤独を生きる』(齋藤孝・著)~蓼科「無藝荘」ほか

『孤独を生きる』(齋藤孝・著/PHP新書) 「孤独」のテーマでも多くの書籍を出している齋藤孝さん。 図書館の新着図書にあったので、リクエストして読んでみました。 あとがきに、読者に向けて、本書で得た知識を周囲の悩める方々にシェアして欲しいとあり、…

『犬がいた季節』(伊吹有喜・著)

2021年本屋大賞第3位に選ばれた小説。最近になって読んでみました。 三重県四日市市の進学校を舞台に、学校に紛れ込んだ白い犬「コーシロー」を世話する、高校生たちの青春を描いた連作短編集。 昭和の終わりから平成に渡っての12年間が描かれていて、最終話…

絵本『しましまかしてください』エッセイ『お楽しみはこれからだ part3(映画の名セリフ)』

先週土曜日は図書館での「読み聞かせ」担当日でした。 今回はこちらの絵本、『しましまかしてください』(作・林なつこ)を読みました。 当日は雨模様で、児童室も閑散としていましたが、館内放送や、児童室にいらした親子の方々に直接呼びかけたら、定員6…

紙芝居と、小説『海の見える理髪店』ほか。

先週土曜は、図書館でのいつもの「読み聞かせ」で、今月私は紙芝居の担当でした。 一応、2作品用意していき、今回いつもより年齢が少し上の小1くらいの男の子も多かったので、『なんにもせんにん』(原作・巌谷小波/脚本・川崎大治/画・佐藤わき子/童心社)…

「天才IT大臣オードリー・タンが初めて明かす 問題解決の4ステップと15キーワード」

「あらゆる問題解決をしてきた、台湾IT担当大臣オードリー・タンの思考法を大公開。」という内容の、普段あまり手に取らない本を読んでみました。 その名やお顔はコロナ禍から色々なメディアで見かけるようになり、どんな考えを持った人なのか興味があったの…

読書感想『ガラスの海を渡る舟』『その日まで』

『ガラスの海を渡る舟』(寺地はるな・著) 主人公は、祖父のガラス工房を引き継いだ道と羽衣子の兄妹二人。 その10年間を、それぞれの視点で描かれた連作短編集。 両親は2人が子供の頃に別れていて、兄の道は人とのコミュニケーションが苦手だ。 道の普通の…

『新しい星』『黄色いマンション 黒い猫』~最近心に残った本

『新しい星』(綾瀬まる・著) 大学時代、合気道サークルの友人同士だった男女4人の連作短編集。 青子、茅乃、卓馬、弦也、皆それぞれ困難な事情を抱えている。 女性同士の青子と茅乃の友情を軸に、30代から40代にかけてそれぞれの喪失や再生などが描かれて…

最近読んだ『月夜の森の梟』『明日へつながる5つの物語』と、橋の上からの写真。

『月夜の森の梟』(小池真理子・著) 朝日新聞で毎週連載されていたエッセイ。先月書籍となり発売されたので、早速図書館でリクエストをして読んでみた。 うちは朝日と他紙の新聞を交互にとっているため、未読の回もあり、是非全文通して読んでみたいと思っ…