こちらの映画、気になっていたところ、いつも拝読している映画ブロガーの方も絶賛されていたので、観に行ってきた。
作家・中條ていの連作短編集「アイミタガイ」を黒木華主演で映画化し、親友を失った女性を中心に思いがけない出会いが連鎖していく様子を描いた群像劇。
(映画.comより抜粋)
上映中、観ながら何度も涙を拭った。
といっても、悲しく胸に詰まされる場面はあっても、この映画は決してお涙ちょうだい的な作品ではなく、次第に温かい気持ちに包まれ、見終わった後深い余韻の残る、とってもいい作品だった。
映像的にも、情緒ある街並み(三重県桑名市・四日市・津市ほか)の風景や夜景の美しさも素晴らしく、そして全編を通してずっと静かな時間が流れているようで、味わい深く、本当に見て良かったと思える作品だ。
「アイミタガイ」。漢字では「相身互い」と書くこの言葉は、人が互いに助け合うことを指す言葉で、「誰かを想ってしたことが、巡り巡って見知らぬ誰かをも救う」という、この作品のテーマを象徴しているのだそう。
予告編にも出てきた、梓の祖母(風吹ジュン)の台詞にもあったけれど、
「気がついていないだけで、色んな想いがめぐって、自分のところに届いている。」というような。
そのようなエピソードが、この作品では色々描かれ、その伏線が終盤になって見事に回収されていた。偶然過ぎるって感じもしたけれど、そのどの場面も胸に迫って来て、今も思い出す度に心が温かくなってくる。
近しい間柄だけではなく、知らず知らず、自分は色々な人に支えられて生きているんだなぁということに、改めて気づかされた。
ウエディングプランナーである主人公・梓を演じた黒木華を筆頭に、出演者みな役にぴったりでそれも良かった。
中学時代からの親友・叶海を失った梓を支えたいと願う恋人役の中村蒼、叶海の両親を演じた田口トモロヲと西田尚美。梓の祖母役である風吹ジュン。
そして何と言っても、老婦人こみち役を演じた草笛光子の、凛としたオーラいっぱいのその佇まいにも圧倒された。とても91歳には見えなかった。
梓と叶海が中学時代のエピソードとして、街に夕方6時に流れる「遠き山に日は落ちて(家路)」の曲とともに、こみちの家から同じピアノの調べが聞こえて来る。
それをその家の裏手で、二人で聴くシーンがあるのだけれど、この曲に込められたこみちの戦争中のエピソードも胸に迫ってきた。
この曲は自分にとっても、小学時代、林間学校のキャンプファイヤーでの思い出の曲。
そして、おっ!と思ったのは、中学時代の叶海を演じた、白鳥玉季。以前ドラマで観たときから、クールで大人びた雰囲気のある子役で注目していたけれど、益々存在感を増していて素敵だった。
それから、叶海の両親が偶然乗り合わせたタクシー、その運転手「車屋」さんとのちょっとの場面でも泣かされた。
やさしさは繋がって、めぐり巡っていく。
最愛の娘を失くした叶海の父親が、話の終盤で、「仕事柄色々な本を読むけど、いい人しか登場しないのは嘘くさいと思っていけれど、そんなことはない。」との言葉も心に残った。
<懐かしのドラマの主題歌>
ところで、エンディングロールで「夜明けのマイウェイ」という曲が流れた途端、出だしの歌詞とともに、とても懐かしい気分に駆られた。
調べてみたらこの曲は、昔、放映された連続ドラマ「ちょっとマイウェイ」の主題歌で、当時、俳優であり音楽家だった荒木一郎が作詞・作曲した「パル」の楽曲だった。
このドラマは、日テレ「グランド劇場」として、1979 年10月から1980年3月まで、毎週土曜21時から放送されていたそう。
その「グランド劇場」のドラマといえば、「熱中時代」シリーズや、先日他界されてしまった、西田敏行さん主演の「池中玄太80キロ」も放送されていて、どちらも当時大好きなドラマだったので、「ちょっとウェイ」も観ていたように思う。
だから懐かしかったのが分かった。映画で聴くまでは、すっかり忘れていたけれど。
この曲は、『アイミタガイ』の制作段階から主題歌として、製作陣の念頭にあったという思い入れの強い曲だそう。
前向きなメッセージが込められた歌詞が驚くほどに物語と重なる同曲を、キャスティング前からカバーしたいという意向があった。そして誰が歌うべきかを検討していたとき、黒木が演じる梓を見て、「やはり梓本人が歌うべきではないか」と、黒木がボーカルも担当する運びとなった。
とのことで、エンディングでの黒木華さんの優しい歌声も、この作品にぴったりだった。
↓こちらは、黒木華さんが歌う「夜明けのマイウェイ」。
「夜明けのマイウェイ」パル(作詞·作曲 荒木一郎)
悲しみをいくつか乗り越えてみました
ふり返る私の背中に まだ雨が光ってます
走っている途中でときおりつらくなって
ふり返りあなたの姿を 追いかけてみもしました
でも夜はもうじき明けてゆきます
今迄と違う朝が ガラスのようなまぶしい朝が
芽生え始めています
悲しみをいくつか乗り越えてきました
ふり返る私の後に ほら虹が揺れてるでしょう
だからもう私は大丈夫です
今までと違う夢が 次第次第に
心の中にあふれ始めています
もう昨日は昨日 明日は明日
今迄のことは忘れ
花びら色のさわやかな日を
迎え始めています
悲しみをいくつか乗り越えて来ました
ふり返る私の向うに 青空が見えてるでしょう
だからもう私は大丈夫です
今迄と違う夢が 次第次第に
心の中にあふれ始めています
私ぐらいの世代だと、この曲懐かしく感じる方は多いのではないでしょうか…。
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こちらの映画は、近くの映画館でも上映されていたけれど、都心に用事があった先週、その帰りに日比谷駅で降りて、「TOHOシネマズ日比谷」にて鑑賞。
上映時間までのしばしの間、同じビルの「パークビューガーデン」にて、ボーっと夕暮れの景色を眺めていた。
観終わって外に出たら、ミッドタウン日比谷前は、たくさんのクリスマスツリーが飾られていて、それはまだ点灯してなかったけど、木々のイルミネーションが綺麗だった。
今週は、もうツリーも点灯していて綺麗だろうな♪
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「優しさは繋がって、めぐり巡っていく。」というのは、以前ブログにも書いた、この絵本も思い出した。
「私には小さなことしかできないかも知れないけれど、それは他の人がする小さなことに繋がるかも知れない。そしてそれは、どんどん大きくなって世界中に広まり、めぐり巡って友だちと私のところまで戻って来る。」という内容の…。
それから、あっちの世界へ行かれてしまった、谷川俊太郎さんのご冥福を心からお祈りいたします。この絵本も大好きです。
今週のお題「絵本」