つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

紙芝居と、小説『海の見える理髪店』ほか。

先週土曜は、図書館でのいつもの「読み聞かせ」で、今月私は紙芝居の担当でした。

一応、2作品用意していき、今回いつもより年齢が少し上の小1くらいの男の子も多かったので、『なんにもせんにん』(原作・巌谷小波/脚本・川崎大治/画・佐藤わき子/童心社の方を読みました。

こちらは、昔から読み継がれているような、「紙芝居ベストセレクション」から選んでみました。絵も大きく面白かったので。

 

毎日山や川で遊んでばかりのたすけは、ある日、壺の中にいた同じく怠け者のなんにもせんにんという小人から頼まれ、留守番として家に連れて帰る。

ところが、たすけがぶらぶら遊んで帰って来る度に、徐々に大きくなっているなんにもせんにん

ついにたすけが家で寝る場所がなくなるほど大きくなってしまい、途方にくれて泣いていると、仙人らしき髭を生やしたおじいさんがやって来て、たすけがちゃんと働けばその男は小さくなっていくと、知恵を授ける。

翌朝からたすけは人が変わったように畑仕事に精を出し、働く楽しさがわかって来ると同時に、なんにもせんにんも小さくなっていき、ついに元の壺に収まり、その壺からは大判小判がザックザク出てきて、めでたしめでたしというお話。

この原作者である、巌谷小波(いわやさざなみ)さんは、1870年の東京生まれ。

作家・口演童話家であり、明治期の児童文学の開拓者であり、昔話の再話によるお伽噺によって近代児童文学に果たした役割は大きいそう。

調べたら、この話は、山口県の民話から生まれたとのことです。

 

なんにもせんにんの馴れ馴れしい言葉遣いと、仙人のおじいさんらしいゆったりした台詞。たすけが働く時の「えいさ、ほいさ、働くことは楽しいな」というリズミカルな台詞などの言い回しを工夫しながら練習し、演じてみました。

 

この日もとても蒸し暑く、マスク&眼鏡姿で大きい声で読んでいると、額からの汗が流れ目に染みて痛かったでした。

冷房は少し効いていたものの、結構長い話で12幕あり7分ほどかかったのと、机の上の紙芝居舞台の高さが合わなくて中腰で読んだのもあり、余計汗だくになったような^^;

3分の1や2まで引き抜く、という場面が多くあったので、練習はしたけれどその点が難しかったでした。

 

この日は、紙芝居希望のお子さんが多く、仲間が絵本を読んだ後もまた紙芝居コールがあったので、もう一つ持ってきていたこちらの『まどからのおきゃくさん』(脚本・よこみちけいこ/画・松成真理子/童心社も読みました。

他の仲間は紙芝居は持参していなかったので。

(こちらは写真を撮っていなかったので、画像はネットから拝借しました。)

 

夜中に、「とん、ととん」と窓を叩く音。

こんな時間に誰だろうと開けてみると、小さく可愛いフクロウさんが。

浮かない顔でどうしたのかな?お腹がすいたのかな?

ラストはフクロウの家族がフクロウの子を迎えに来て、皆に会えて良かったねという、ほのぼのとしたお話。

最後の場面での、フクロウ家族勢ぞろいした絵も、幻想的でとても素敵です。

 

こちらは観客参加型の紙芝居で、観客に問いかけたり、場面を抜いたりまた戻したりすることによって、フクロウの顔が首を傾げたり戻ったりする表情が、特に可愛いお話です。

でも4分以内で読めてしまう作品なので、終わってから、「え~?もう終わり?」という声が聞こえてきましたが、この紙芝居は幼児向けなので、小学生には物足りなかったかも知れません。^^;

この後はバンド練習があったので、そそくさと失礼してしまいましたが、どちらの作品も親子の皆さんに楽しんで頂けたら良かったなと思います。

 

<最近心に残った本>

『海の見える理髪店』(荻原浩・著)

かなり前に文庫本を購入したものの、いつでも読めると今まで読んでいなかったのだけど、最近ブログで色々な方がこの書籍やドラマの感想を書かれていたので、やっと読んでみました。

家族をテーマに、表題作のほか、人生に訪れる喪失と向き合い希望を見出す人々が描かれた、どれも心に染みる全6編からなる短編集。

「僕」はある思いを抱いて海辺にある伝説の理髪店を訪れる『海の見える理髪店』

ドラマでは、その理髪店主は柄本明が演じていたそうで、読んでいると、店の鏡に映る背景の青い海をバックに、「僕」に向かって語る饒舌な店主役・柄本明の声と、小気味の良い鋏の音が聞こえてくるようでした。

店内には静かに流れる曲は、ビートルズの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウイズ・ダイヤモンズ」。

客層に合わせて音楽を流しているけれど、若い客用の曲はあまり用意してないからビートルズでもとかけましたという店主は、客の「僕」に、今まで生きて来た人生を切々と語り続けます。

昭和40年代初めにビートルズが来日してから、長髪が流行りだし、床屋という職業がゆっくり傾いていった。という店主の言葉に、ビートルズ来日は床屋さんにも影響していたのか~、そうかも知れないなと感じたり。ラストが特に感涙でした。

 

どの話も良かったけれど、読む人によってのイチオシ作は、それぞれ分かれるような6編。

私は、一人暮らしの母を16年ぶりに訪ねた『いつか来た道』の主人公「私」に感情移入でき、娘を亡くした夫婦の喪失感と再生が、喜劇風に描かれていた『成人式』の2編が特に心に残りました。

以前この小説の感想を書かれていたmarcoさんの記事を今、再び見に伺ったら、marcoさんも、同じくこの2編が感動だったと書かれていたので、おぉ!と思いました。(^-^)

 

『人生の旅をゆく4』(よしもとばなな・著)

図書館で借りて、シリーズものだけれど初めてのエッセイであり、よしもとばななの本自体、かなり久しぶりでした。

「人生ってとっても短いものだ。私のエッセイのテーマは基本的に過去の良かったことをふりかえって描き、人生はたとえどん底にあっても、ふと良い場面に出会う可能性があること、それは誰にでも平等にあることに気づいてもらうきっかけになれば嬉しい。」

というあとがきの言葉その通りの、肩の力が抜けた、気楽に読めて、しかも読み応えたっぷりの楽しいエッセイ。

本文での、「悩み深い人がどうしてそうなるのかと観察していると、自分のことばかり考えていて、同じように苦しみ悩みながら人生の旅をゆく同胞の姿が見えなくなってしまうから。」(部分抜粋)

という言葉にも、自戒を込めてなるほどと感じました。

まるで、親しい友達から話しかけられているような気分にさせられたエッセイでした♪