つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

『パーフェクト・デイズ』~年末に観た映画

明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。

元旦から大地震や痛ましい事故が立て続けに起こってしまい、言葉もありませんが、被災された皆さま、心からお見舞い申し上げます。

 

昨年末はこちらの作品を観てきました。

役所広司主演の話題作というだけあって、久しぶりに満席に近い混み具合でした。

映画『パーフェクト・デイズ』

幸せとは、人と比べて感じることではなく、自分の普段の何気ない生活の中にあるということに、改めて気づかされるような作品。

この数日間は特に、普通に繰り返される日常が何と尊い日々かと、より思い知らされる気分でこの映画を振り返ってみました。

 

渋谷の公衆トイレ清掃の仕事をする寡黙な男性、平山(役所広司が主人公。

先ず、平山が住んでいる安アパートの部屋は、数年前に観た、同じく役所広司主演の『素晴らしき世界』で、ムショ帰りの主人公が住んでいた部屋を思い出した。

平山には朝の目覚めから、毎日決まったルーティンがある。それを黙々とこなす毎日。

そんな中でもささやかな幸せを感じているのが画面から伝わってくる。

朝、外の道を竹ぼうきで履く音で目が覚め、まだ暗いうちから起き、植物に水をやり、身支度を整えた後、家のドアを開けて空を仰ぎ、外の空気を感じる。

車に乗り込む前に、家の前の自販機で缶コーヒーを買う。

車の中では、お気に入りのカセットテープの曲を流す。

都内の朝焼けの風景を見ながら、また帰りは、夕日を見ながらその曲を聴く。

アニマルズの『朝日があたる家』や、ルー・リードの『パーフェクト・デイ』ほか、流れる風景と相まってとても耳心地の良い選曲ばかりだ。

特に懐かしく感じたのは、オーティス・レディングの、『ドック・オブ・ザ・ベイ』

トイレ清掃の仕事は、丁寧且つスピーディで黙々と行っている。

昼食時などの休憩時間は、公園で空を仰ぎ、カメラを取り出して木々を撮影する。

家に帰り、自転車で銭湯へ行く。銭湯の帰りに、居酒屋に立ち寄る。

夜は眠くなるまで小説を読む。それが毎日の日課

平山の夢の中を表しているような、モノトーンの木漏れ日のような影が、画面に時々挟み込まれている場面が印象的だった。

古本屋で次に読む文庫本を選ぶ。レジで、女店主がその本の内容について、短く的確に表していた言葉が秀逸で、私もその本を読んでみたくなる。

そんな平山の日々を追うようなこの作品は、まるでドキュメンタリー作品を見ているようでもあり、見ているこちら側も、ささやかな幸福感をお裾分けしてもらえたような気分になれた。

平山が清掃を担当している渋谷のトイレは、どこもお洒落なつくりだったのも印象的だった。

今どきのスマホではなく、カメラから現像した写真。金銭的な事情もあるにせよ、カセットテープといい、時代に流されない、素朴な生活を大切にしている様子が伺われた。

共演者では、三浦友和との場面が特に心に残った。

 

監督は、やはり印象深かった『世界の涯ての鼓動』や、昔、日比谷の映画館で観た、『ベルリン天使の詩ヴィム・ヴェンダース

以前も書いたと思うけど、『ベルリン天使の詩は、当時誘った友達が上映中ずっと居眠りしていて、誘ってしまって申し訳なかったとの思いが同時に蘇る作品。

今回見たこの作品も、淡々と話が進む静かな映画なので、自分も意識が途切れた瞬間があったけれど。(;'∀')

主人公が今の暮らしにたどり着くまでに、どういう人生を歩んできたのか、特にその説明はなかったけど、妹は裕福な生活をしているようで、平山も裕福な家庭で育ったものの、複雑な人生を歩んできたんだろうと感じた。

ラストで、車中でお気に入りの曲を聴きながら、何とも言えない、役所広司さんの万感迫るその表情に、今まで生きてきた人生その全てが凝縮されているように思えた。

 

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中流れた曲の中で一番懐かしく感じた曲、オーティス・レディング『ドック・オブ・ザ・ベイ』。この歌詞も、平山の人生に通じるところがあるように思う。

youtu.be

「この曲は 1967年12月10日、飛行機墜落事故で 当時26才のレディングが亡くなる3日前に録音され、1968年1月8日にリリースされた レディングの最後の曲であり、彼の最大のヒット曲となった。またアーティストが亡くなった後リリースされ 米国でNo1となった 初めての曲です。」と、解説にあったけれど、オーティス・レディングは、26才の若さで亡くなってしまったんですね。

 

こちらは数年前に観た、同じくヴィム・ヴェンダース監督作品の感想です。

tsuruhime-beat.hatenablog.com

 

新年最初のブログは、昨年2023年の「びっくりした話」以外は、毎年映画の感想を書いていました。調べてみたら、以下の作品でした。

2022年 『パーフェクト・ケア』

2021年 『声優夫婦の甘くない生活』

2020年『マリッジ・ストーリー』『男はつらいよ50お帰り寅さん』(2019年・年末)

   スターウォーズ・スカイウォーカーの夜明け』(年始)

2019年 『アリー/スター誕生』

昨年から上映されている観たい作品が、まだ他にも色々ありますが…。

 

最後に、お正月らしい風景を。松をバックに、地元の「芭蕉」像です。

皆様におかれましても、穏やかで幸多き1年となりますように。