つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

映画『君たちはどう生きるか』絵本『EDNE』~どちらも迷宮に迷い込んだような作品

映画『君たちはどう生きるか

宮崎駿監督の最新映画、どうも気になり今週観に行ってきました。

前回観た『風立ちぬ』以来、10年ぶりの同監督作品。

公開されたばかりだし何かと話題の作品でもあるので、ストーリーには触れず、簡単な感想にとどめておきます。

主人公である少年・牧眞人の冒険ファンタジー

作品タイトルから、強いメッセージ性のある作品なのかと思ってましたが、特にそこまでは感じませんでした。物語後半、石にまつわる部分で、主人公を通して、観客にどう生きるのか問われているような気はしましたが…物語の中でも現実でも、不安定なこの世の中を。

このタイトルは、宮崎監督が少年時代に読み、感動したという君たちはどう生きるか』(吉野源三郎・著)から借りたものだそうです。

 

1回観ただけでは、理解出来なかった部分はあったものの、映像的にはとても美しく素晴らしかったので、大きなスクリーンで堪能できて良かったと感じました。

過去の作品を彷彿させるような、キャラクターが登場していたのも懐かしく。

生と死、生まれ変わりにも若干触れていたり、その部分も含めて、映像的にもスケール感が大きく、心に強く残った映像も多々ありました。

それにしても、この作品では一体何万羽の鳥が登場していたのだろうと、鳥尽くしだった点もインパクト大でした。(ヒッチコックの『鳥』と比べたら、どちらが多いのか^^;)

ラストの方では、なぜか涙あふれた場面もありました。

こういったファンタジー色の強い、摩訶不思議な世界は好みであるので、お気に入りの一作になりました。

観終わって、誰かと無性に感想を話し合いたい作品でもありました。

帰りに、男子高校生たちの「エンドロールで、声優が豪華だったね。」との会話が聞こえてきましたが、私は、主人公・眞人の若かりし頃の母の声が一番気に入り、エンドロールであの人だったのかと分かりました。

歌声はよく耳にするのに、観ていた時は気づきませんでした。^^;

 

前回ブログに書いた『竜とそばかすの姫』の主人公・すずと同じく、眞人も、深い喪失感を抱えた主人公だったのと、異空間での不思議な体験を通しての、成長物語であるのが共通していると感じました。

この作品の中で、吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』を、眞人が偶然にも読む場面が出てきましたが、観終わって、私も是非読んでみたいと思いました。

そしたら、もっと監督がこの作品に込めた思いに触れられるような気がします。

 

関連した作品を読むと、もっと理解度が深まると感じたのは、偶然にも今、図書館で借りている絵本『EDNE』もそんな作品なので、同じく摩訶不思議な世界を表した、こちらの絵本も紹介したいと思います。(ご存じの方も多いかもですが。)

絵本『EDNE(エドネ)』(Junaida・著/ 白泉社

www.hakusensha.co.jp

不朽の名作、ミヒャエル・エンデの『鏡のなかの鏡―迷宮―』へ捧げる30篇のオマージュ。シンメトリーに見えて、同じでない絵。始まりと終わりがつながる不思議な世界。見るものを魅了する、美しさと思索に満ちた1冊。(2022年6月刊)

どの絵も、哲学的な言葉が添えられているので、どちらかというと大人向け絵本という趣ですが、年齢問わずその世界観に引き込まれるような、絵はもちろんのこと添えられた短文も、インパクト絶大なとても素晴らしい絵本です。

自分の明るい部分にも、闇の部分にも共鳴するような作品ばかりで。

 

巻頭に、「ミヒャエルとエドガー、二人のエンデに」との作者の言葉がありました。(エドガー・エンデは、ドイツの画家・児童文学作家で、ミヒャエル・エンデの父だそう。)

巻頭といっても、本の両サイドどちらから見ても良いように作られていて、30編からなる絵も、見開きごとにシンメトリーになっている不思議な絵本です。

右側には日本語で、左側には同じ文が英語で書かれています。

この、最後(あるいは最初)のページでの、

誰がこの扉を通ったのか。どちらの側から通ったのか。

それはいつだったのか。それはなぜだったのか。

それに対する最初の、たくさんのドア・階段が描かれている建物の絵では、

なぜこの扉を通るのか。いつ通るのか。

それはどちらの側からなのか。そして、それは誰なのか。

と、少し変えた文が書かれています。解説にあるように、始まりと終わりが繋がっているようであり、輪廻転生にも通じているように感じます。

絵もページ毎、左右同じように見えて若干違っていたり。違う部分を探すのもまた楽しく、まさに見る者のイマジネーションを掻き立てられるような絵本です。

本のタイトルも、エンデの名を逆にしたのでしょうか。

 

深紅の長い階段の向こうは深い森。その階段の踊り場で、森に向かって浮かんでいる小さな二人の男性の絵では、

伝わることが伝えたいこととは限らない。

幸福は人知れず咲いて、誰にも知られず散っていく花なのだ。

 

左右対称の円形の町の絵では、

向こう側の存在を、こちら側が知る術はない。

ただし、向こう側が存在しなければ、こちら側も存在しない。逆もまた然り。

この言葉は、鏡を介してのこちら側とあちら側の世界や、パラレルワールドのようです。

 

少年が、山脈が浮き出る青いテーブルの上に座り、テーブルの下は、暗黒の闇の中に椅子が吸い込まれていくような絵は、まさにこの映画での眞人自身を連想してしまいました。

落下を学んだ私には、その足下だけがその方向ではない。

奈落は上でも下でもなく、思考を停止したお前の背後で笑うのだ。

 

こちらの幻想的な絵にも引き込まれました。

上の「白泉社」のサイトに、他の作品も数点載っています。

 

ミヒャエル・エンデの『モモ』や『はてしない物語』は大好きな作品ですが、この絵本がオマージュしたという、『鏡の中の鏡ー迷宮ー』は読んだことがないので、読めばこの絵本への理解がもっと深まると感じました。

君たちはどう生きるか』と同じように。

そしてこの絵本自体、購入して手元に置いておきたい作品だし、プレゼントにもいいなと思いました。

作者のジュナイダさんは、てっきり外国の画家かと思ったら、若い日本人男性でした。

僕は「絵描き」になった。-ほぼ日刊イトイ新聞 (1101.com)

 

スピッツ草野マサムネさんと共作の絵画本も、今年5月に刊行されたようです。

spitz-web.com

ジュナイダさんの精密で色彩豊かなその絵画を、是非間近で見てみたいと展覧会を調べてみたら、今年は来月から千葉県佐倉市立美術館で開催されるようですね。

遠いけど、期間中に行けたらいいなぁと思います。

bluesheep.jp

今回は関連性があったからとはいえ、私はなぜ一つの記事に二つのことがらをつい盛り込みたくなってしまうのか…

といつも思いつつ、次回も二つのことを書く予定です。