つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

映画『怪物』~明治神宮御苑

(公開後まだ日が浅いので、ネタバレしない程度に書いておきます。)

「怪物」とは何か、登場人物それぞれの視線を通した「怪物」探しの果てに訪れる結末を、是枝裕和×坂元裕二×坂本龍一という日本を代表するクリエイターのコラボレーションで描く。(「映画.com」の解説より抜粋)

是枝監督作品の映画は、『誰も知らない』からわりと観ているけれど、映画館でこの予告編を観たとき、今までの作品と違い不穏な雰囲気満載だったので、ちょっとたじろいてしまった。

でもその脚本が、大好きだったドラマ『カルテット』『大豆田とわ子と三人の元夫』や、映画『花束みたいな恋をした』の坂本裕二氏だったので、やはり早く観てみたい気持ちは抑えられず。

さすが是枝監督で、今回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞したこともあり、都合の良い日を検索したらほぼ満席だった。公開以来ずっと混んでいるのだろうな。

先日、学生時代の友人たちと久しぶりにランチをしたので、帰りにその近隣映画館で観ることができた。

それでも比較的席が空いてたのは、1列~3列のみだったので、3列目の両隣人が居ない席をゲット。

 

この作品は、同じ出来事が登場人物3人の視点で順に描かれていた。

最初は、小5の息子・奏を愛するシングルマザーの早織(安藤サクラ)の視点から。

次は、奏の担任である、保利(永山瑛太)の視点から。

最後は、小5の奏(黒川想矢)の視点から。

最初の早織の視点と、息子の担任である保利の視点では、事実関係が全く違っていたのに驚いてしまった。

息子が学校でいじめに遭っているような様子から、担任から暴言や暴力があったことを息子から聞き出し、学校に直談判に行った早織。

その校長室での、やり取りでの場面で、校長以下、担任その他の先生の謝罪や弁解が如何にも杓子定規過ぎて、観ている私は呆れすぎて、かえってこれはコントなのか?と一瞬感じてしまったほど。

ここまではどの登場人物も「怪物」に思えた。

その校長役の田中裕子さんの、能面のようで不気味な演技、特に印象的で凄かったなぁ。校長がなぜそんな様子だったのか、程なく事情が分かってくる。

二番目の奏の担任・保利の視点では、なんでこんな理不尽な展開になってしまったのか、さらに憤りを覚えた。

そして最後の、奏の視点では、またそれまでの奏の印象とは全く違っていた。

映像としても美しい場面が続き、森や草原の緑、それに同化したような、少年たちの瑞々しい感性が画面から伝わってきて。

湊たち少年のナイーブでひたむきな純真さ切なさが、醜いパワハラ父親との対比で、さらに際だった感じで胸を打たれた。

そしてエンディングでは、坂本龍一さんの美しいピアノ曲とともに、何とも言いようのない気持ちに駆られて涙があふれた。ラストでは、坂本さんへの追悼の言葉も…

静寂で美しい湖の映像が作中ところどころ差し込まれていて、それはエンドロールで、諏訪湖だったのが分かった。

 

中盤、吹奏楽の音色が校内に響き渡り、その音からも、観ていて不穏な気分に駆られた。でも後半でその場面が映り、音楽室で登場人物の二人が、その音色を出しているシーンは、台詞とともに心揺さぶられた。

このように、ものごとの事実関係は、表の部分とその側面や裏側を知ることによって初めて分かるものなのだろうな。

観終わってから、予告編を観た時に感じた、ホラーチックな印象と違ったのは、これも同じく、作品への先入観を持って観ないようにとの意図もあったのかなぁと思った。

早織は最初、担任に対する良くない噂を耳にしていたから、より悪い印象を持ってしまったように感じたけれど、人への憶測とかも、悪い方に考えると、悪い妄想がどんどん膨らんでしまい、疑心暗鬼に陥いるのだろうな。

ちょっとしたことで誤解してしまうことは、人間関係でもよくあること。

奏を演じた黒川想矢君、小5にしては大人びていたけれど、ナイーブでひたむきな感じが良かったな。もう一人の依里役・柊木陽太君も、とってもピュアで可愛らしかった。

以下、映画の前に友人と行った、明治神宮御苑と明治神宮の写真です。

明治神宮御苑は、今の時期、花菖蒲と蓮の花がとても綺麗でした。

久々の明治神宮。駅前の鳥居をくぐったときから、森林の空気が清々しく、とても良い気が流れているのが感じられました。

海外の観光客もいっぱいで。賑やかな原宿の直ぐそばに、こんな広大な都会のオアシスがあるなんて、きっと海外の方もびっくりではないでしょうか。

 

友人が先月来たときは、まだ菖蒲が咲いてなかったそうで、リベンジ出来て良かったと言ってました。

清正井清正の井戸)

明治神宮の中でも、特に凄いパワースポットといわれている清正井は、江戸時代初期、加藤家の庭園だったことから、加藤清正が掘ったと言い伝えられているそう。

写真を撮って待ち受け画面にするとご利益があると、かなり前に話題になりましたね。(私はまだ待ち受けにはしていませんが。)

その頃は、長蛇の列との噂だったので、今回初めて井戸まで行ってみました。この時は、数人しか並んでいませんでした。

清水が毎分60リットルもこんこんと湧き出していることから、花菖蒲園の水源にもなっているそうです。

縁結びの象徴となっている、御神木「夫婦楠」

 

明治神宮苑内「フォレストテラス」の「レストランよよぎ」でランチを食べた後、明治神宮など散策して、またこちらでお茶しました。

森の中のレストランという感じで、開放的な窓からの緑もとても綺麗でした。「抹茶フルーツあんみつ」も、とても美味しかったでした♪

帰りの電車の中で、その日会った友人たちのLINEに、「時間があったので『怪物』を観て来た。思っていたより深くて良い映画だった。」と送ったら、友人の一人から、「是枝監督作品は嫌いではないけど、観終わった後すっきりせずモヤっとするので、『怪物』もちょうど観ようか迷っていたんだけど、おすすめ⁈」ときかれました。

なので、確かに、観客に判断をゆだねるというか、問題提起する作品も多いし、今回のもラスト、う~んどうだったんだろうって部分はあったけど、でも観て良かったよ。というようなことを伝えました。心揺さぶられる作品が好みなので。