つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

『チャーリー・イズ・マイ・ダーリン』『ベイビー・ブローカー』~最近観た映画

『チャーリー・イズ・マイ・ダーリン』

以前ブログでも公開予定について書いたけれど、結成60周年&チャリー・ワッツ追悼で、今月初旬から公開されたザ・ローリング・ストーンズのこちらの作品を観に行ってきた。

(『ロックン・ロール・サーカス』も同時公開されているけど、こちらはDVDを持っているので。)

解説: ロックバンド「ザ・ローリング・ストーンズ」が1965年9月に行ったアイルランドツアーに密着した音楽ドキュメンタリー。「サティスファクション」がイギリスとアメリカで売り上げ1位を記録した直後の彼らを追い、オフショットやインタビュー、2011年に発掘されたステージ映像などで構成される。監督を務めたのは『THE PINK FLOYD』などのピーター・ホワイトヘッド

シネマトゥデイ

1965年9月3日~4日のアイルランドツアーを追った、ストーンズ初の正式フィルムで最古のライブ映像。

渋谷Bunkamuraで映画を観たのも久しぶりだった。

この先の道をちょっと行けば、ミニシアター「アップリンク」があり、そこは閉館してしまったなぁと思いながらル・シネマへ。

アップリンク」では、ポール・マッカートニーのニューヨーク・ライブドキュメンタリーや、『マリッジ・ストーリー』などを観に行ったっけ。

 

ローリング・ストーンズのドキュメンタリー作品を大きなスクリーンで観るのは、2008年公開の『シャイン・ア・ライト』以来なのでワクワク気分だった。

 

アイルランドの熱狂的なファンたちに迎えられるストーンズ

全編モノクロ映像でもあり、ビートルズ初めての映画、『ア・ハード・ディズ・ナイト』と同じく、冒頭からファンに追いかけられたり、ファンがたくさん映るシーンが楽しい。

ステージでも、観客の熱狂ぶりはすさまじく、「アイム・オールライト」の途中で観客達がステージにまで乱入して来て、メンバー皆ファンに飛びつかれ、もみくちゃになっている姿も生々しかった。

 

ステージ以外でのオフショットでも、ホテルの一室で、キースのアコギに合わせて曲作りや、『テル・ミー』から、ビートルズの『夢の人』『エイト・ディズ・ザ・ウィーク』などを皆で和やかに歌う場面も良かったな。

キースのギターは、やっぱりかっこいい!

また、キースのピアノの合わせて、エルヴィス・プレスリーの曲をミックと共に歌うシーンもとても楽しそうで。

 

『テル・ミー』といえば高校時代の夏休み、部屋で寝転びんがらこの曲が入っていたアルバムを聴いていたのを思い出す。そのクレジットに、『テル・ミー』は日本でとても人気がある曲と書かれていたような気がするけど、私が見に行った来日公演で『テル・ミー』をやってくれたことは一度も無かったような。

 

ストーンズファンになった高校時代、キースが一番好きだったけど、この頃はチャーリー・ワッツ以外のメンバーは、映像をみていて改めて子供っぽく感じた。

その中でのチャリーは、一番大人っぽく、その端正な顔立ちといいまるで貴公子のような雰囲気。演奏シーンも、淡々と落ち着いたチャーリーのイメージだったけれど、ノリ良くキラキラ弾けた表情も素敵だった。

 

もしストーンズになっていなかったら?とのインタビューで、チャーリーは元々デザイナーだったからデザイナーと答えていたのと、普段からカメラを構えていたブライアン・ジョーンズは、カメラマンになりたかったとの答えが印象的だった。

 

この頃メンバーの中で結婚していたのはチャーリーだけで、音楽をかけながら読書をしたり、家で過ごす時間が一番好きと答えていたのも、いかにもという感じがした。ずっと愛妻家だったそうで。

 

ミックが、一般ファミリーの記念写真にちょこんと収まっている、お茶目で気さくな様子や、列車の移動中、皆でリプトン紅茶は美味しいと言いながら飲み、ジョン・レノンのオススメとか言っていたのも面白かった。

 

メンバーの素の部分も色々堪能でき、初々しくも熱狂的なステージシーンはもちろんのこと、オフでのリラックスしている姿も十分楽しめた作品だった。

音響が悪かったわけではないけど、ちょっと迫力に欠けていたのが残念だった。

 

先月12日で結成60周年を迎えたザ・ローリング・ストーンズ

1年前にチャーリーが亡くなってしまい、結成当初からのメンバーは、今はミックとキースだけになってしまったけど、バンドでそこまで長く続くなんてほんと驚異的だと思う。これからもずっとロックの道を転がり続けて欲しい。

 

<主なライブ演奏曲>

ラスト・タイム
タイム・イズ・オン・マイ・サイド
アイム・オールライト
エヴリバディ・ニーズ・サムバディ・トゥ・ラヴ~ペイン・イン・マイ・ハート
アラウンド・アンド・アラウンド
サティスファクション

youtu.be

* * *

 

このストーンズ作品は63分だったので、前から観たかった是枝監督作品の『ベイビー・ブローカー』がこの近く、パルコ・シネクイントでやっていたので、久しぶりに映画の梯子をしてきた。時間もちょうど良かったので。

うちの近くでも先月下旬に終了していたし、都内でももう数か所しかやっていなかったせいか、結構混んでいた。もちろん話題の人気作だからだろうけれど。

 

<大まかなストーリー>

借金に追われ、古いクリーニング屋店主であるサンヒョン(ソンガンホ)と、「赤ちゃんポスト」がある養護施設で働くドンス(カン・ドンウォン)は、ベイビー・ブローカーを裏稼業にしている。その二人は、ポストからこっそり赤ちゃんを連れ去るが、その実母であるソヨンに裏稼業のことがばれてしまう。

その実母と共に、赤ちゃんの養父母探しの旅に出るというロードムービー

 

疑似家族的なところが、同監督作品の『万引き家族』と似ているということと、だいたいのあらすじは知っていたのだけど、話の中盤、ソヨンの意外な秘密などが分かったりで、最後まで画面に引き付けられながらみていた。

 

全編を通して、温かさやユーモアがあるところも『万引き家族』のような雰囲気だった。

最初はお金目的だったけれど、ソヨンの子や、途中で紛れ込んで来た施設の少年と共に、次第に家族のような温かい絆が芽生えてくる。

この一行を追っていた、刑事2人の気持ちが変化していく過程も良かった。

 

主演のソン・ガンホは、以前観た『タクシー運転手~約束は海を越えて』や『パラサイト・半地下の家族』と同じく、とても存在感があった。

以前テレビで観たインタビュー映像で、撮影中、だんだん本物の家族のようになってきたとのエピソード通り、赤ちゃんがソン・ガンホになついている様子も、その赤ん坊の扱い方もとても自然であり微笑ましかった。

ドンス役のカン・ドンウォンもかっこよかったし、若い母親ソヨン役のイ・ジウンは、松岡茉優に似ているなと思いながらみていて、それぞれその演技にも惹きつけられた。

途中から行動を共にすることになる少年役の演技もとても自然で、いかにも是枝作品の子役って感じがした。

 

一番心に残った場面は、終盤、観覧車の中でのドンスとソヨンの会話シーン。

見ている私もこの二人のために、このまま時間が止まってしまったらいいのにと思ったくらい、この場面で流れていた静かなピアノ曲とともに、二人の台詞の一つ一つが切なくその情景とともに心に染みた。

ドンス自身も施設出身で母親に置き去りにされた過去を持ち、だからなおさら、ソヨンの子供への思いにも共感出来るのが伝わってきた。

 

それから、寝る前の暗がりの中で、ソヨンが自分の子供だけではなく、サンヒョン他一人一人に囁いた言葉も心に染みた。

「生まれてきてくれてありがとう。」感謝したい人全てに贈りたくなるような、いい言葉だな。

 

明るい未来が予想できる終わり方で、美しいピアノ曲が流れたエンドロールも、作品の余韻に浸れ、じわじわ感動が胸に広がって来るようないい時間だった。

万引き家族』のときも思ったけれど、血のつながりにはこだわらない、温かくて新しい家族形態がどんどん増えればいいなと思う。

 

夕闇迫る帰り道、暑さも収まっていて、良い作品効果もあり、人が多くて昔から苦手だった渋谷の街でもとても爽やかな気分で歩けた。