毎回楽しみにしていたドラマだったけど、邦画はテレビでやるのも早いし、わざわざ大きなスクリーンで観なくてもと、劇場版は観に行かなくてもいいかなと思っていた。
ところが公開当日、同じくこのドラマのファンだった、中学時代の友人から朝一の回で早速観に行って来たとのLineが来た。
とても良かったので絶対観に行った方がいいよと言っていた。
劇場版にありがちな大事件は起こらず、いつもの感じがとても良かったので、近々2回目も観に行こうかなぁとのこと。
その友達は特に映画好きでもないので、シニア料金で観られるようになってから今回初めて映画館に行ったそうだ。
そのLineは「チャレンジャー3」という名の、もう一人の同級生と三人でのグループLineであり、もう一人の友だちも、「いつもの感じだから良いのよ。いいなぁ、私も来週には観に行って来る。」との返事。
(因みにそのもう一人の友だちとは、先月絵本の記事にUPしたUFOらしき写真を撮った友達。昔『未知との遭遇』が公開された時に一緒に観に行って、その後感想を話し合い、お互い作品の不明点を解消出来たのも懐かしい思い出だ。)
私は「テレビで直ぐやりそうな気がするので観に行く予定はなかったんだけど、中村屋は出て来た?」と気になっていたことを訊いてみた。
中村屋とは、料理上手なシロさんがよく買い物に行くスーパーで、実際に私達の実家のそばにある。
昨年閉店してしまった「中村屋」は映らず、残念ながら別のスーパーに変わっていたけど、ドラマでお馴染みの店員さんは出演されていたとのこと。
私も友達の熱い感想を聞いてからやはり観たくなってきた。
来週その3人で1年ぶりに会う予定もあるので、映画の感想も話し合えるかなぁと。
ということで、前置きが長くなったけれど、『劇場版 きのう何食べた?』を観に行って来た。
よしながふみの漫画を原作に、同性カップルの暮らしを日々の食を通じて描くドラマシリーズの劇場版。
料理上手で倹約家の弁護士・通称シロさんこと筧史朗(西島秀俊)と、同居する恋人の美容師・通称ケンジこと矢吹賢二(内野聖陽)が営む、穏やかな日常を揺るがす騒動が巻き起こる。
(解説はシネマトディより抜粋)
監督の中江和仁は、やはり面白かったドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』の監督であり、安達奈緒子は、前回のNHK朝の連ドラ『おかえりモネ』の脚本も手掛けている。
観に行ったシネコン内で一番広いスクリーンでもスカスカではなく、このシネコンにしては結構多くの観客が入っていて、このドラマの人気度が伺われた。
映画は、シロさんが珍しくケンジの誕生日祝いとして、京都旅行に誘うところから始まる。
普段旅行などに興味無いのに、旅の段取りも完璧に、旅行中もひたすらケンジを喜ばせることに徹しているシロさん。
その様子に、最初こそ有頂天で旅行を満喫し感激しまくっていたケンジも、何か裏があるのではと不安になり出す。
これらの最初の話の展開からして、ケンジのその喜びや驚き、不安感も、内野さんのケンジパワー炸裂シーンであり、何ともコミカルでドラマ以上に笑わせてもらった。
自分が思わず吹き出してしまったシーンで、周りの客席からも同時に笑い声が聞こえてきたり、映画館で観る醍醐味って、他人同士の観客と感情を共有出来る、こういうところにもあるんだよなぁって、前回映画館で観たときもそう思ったっけ。
さすがドラマからの西島秀俊と内野聖陽の絶妙な掛け合いも板についていて、抜群のコンビ感も最高だった。
もはや演技では無く自然に笑っちゃっているでしょう?みたいな。
もう一組のゲイカップルである、特に小日向役の山本耕史の演技も、その真剣さがかえって可笑しくオオウケだった。
今回は、シロさんとケンジ両方の家族の問題も絡めていて、相手にはなかなか言い出せない互いの胸の内、相手を思いやる気持ちが切ないほどヒシヒシ伝わって来た。
同性カップルとか関係なく、人間の幸せの在り方や生きて行く上で大切なことが、この二人や作品全体からさり気なく伝わって来るようで、笑いだけではなく胸に沁み入る場面が多々あった。
予告編にもあるように、「誰かの嬉しいことってのは、やっぱり嬉しいじゃない。」とのケンジの言葉が特に心に響き、と同時にケンジの心の広さピュアさも感じられた場面だった。
それは、同性愛者ゆえに今までそうでない人以上に傷ついてきたから、他者への思いやりが深くなったのではというより、ケンジの本質自体が純粋な人柄だからじゃないかという感じがした。
作品終盤でも、思わず目頭が熱くなり心揺さぶられたり、ささやかな日常を描いたドラマのほのぼのとした世界観そのままで、私もすっかり癒されて、温かい気持ちに包まれながら映画館を後にした。
また、このドラマの醍醐味である、毎回シロさんが作る料理が、その料理過程含め今回もどれも本当に美味しそうで、「リンゴのキャラメル煮」やそれをトーストに乗せて食べるシーンなどもヨダレものであり、家で試してみたくなるものばかりだった。
京都旅行のシーンも、何度か行ったことがある南禅寺やその水路閣、高台寺のライトアップなども懐かしく、今年の京都の紅葉は何年か一度の素晴らしさとの記事を少し前に目にしただけにまた訪れてみたくなる。
感染者もだいぶ減った、今の紅葉の時期の京都はすごい賑わいだろうなぁ。
観る前、同じシネコンでやっていた、以前小説を読んだことがある『老後の資金がありません!』での草笛光子の怪演ぶりが面白いと評判だったのと、他の友だちが良かったと言っていた『Dune砂の惑星』の両作品ともにちょっと後ろ髪を引かれたのだけれど、やはりこの映画を観て良かったと思った。
ドラマを見ていなくても、楽しめる作品だと思う。
作品の主題歌である、スピッツの『大好物』もこの映画の雰囲気にぴったりで爽やかな曲だった。
(京都ではありませんが、2年前のちょうど今頃、伊香保に行くとき寄った水沢観音での紅葉です。)