つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

アニメ映画『ルックバック』

気になる映画は色々あるのだけど、最近映画館に足を運べていない。

とても感動したと、先日長男夫婦から強く薦められたのが、こちらのアニメ作品。

原作は、藤本タツキの同名漫画。私はこの原作漫画も知らなかったけれど、かなりヒットしたとのこと。

この作品は、大人も子供も料金一律1700円なので、シニア割も使えなかった~^^;

それに対して上映時間は58分間と短かったけど、確かに中身は濃く、見終わって、2時間くらいは経ったような感覚だった。

青春アニメ作品のせいか、観客も若い世代が多かった。

押山清高監督、脚本、キャラクターデザインを担当。

『不適切にもほどがある!』の河合優が藤野、『あつい胸さわぎ』の吉田美月喜が京本の声優を担当。

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【あらすじ】

小学4年生の藤野は、学年新聞で4コマ漫画を連載している。

そんなある日、学年新聞に初めて掲載された不登校の同級生・京本の4コマ漫画の画力の高さに衝撃を受ける。ひたすら漫画を描き続けるも、京本との画力差に打ちひしがれた藤野は漫画を描くことを諦めてしまう。

しかし小学校卒業の日、京本に卒業証書を届けに行った藤野は、そこで京本から、「ずっとファンだった」と告げられる…。

作品舞台は、東北の雪深い街。

担任から頼まれ、しぶしぶ卒業証書を京本の家に届けに行ったとき、思いがけず京本から「藤野先生の漫画のずっと大ファンだった。」との思いを聞かされる。

その時の、京本の恥じらいながらも、全身全霊で勇気を振り絞り打ち明けるその姿に、先ずグッと来た。京本さんの東北弁も味があって。

思わず「サインを下さい!」と、自分が着ている半てんの背中に、藤野のサインをマジックででかでかと書いてもらう。

自分は京本の漫画に負けていると4年からずっと思っていた藤野は、実は京本から神のように思われていたことを知り、その帰り道、驚きと嬉しさが込み上げて来るような、

天にも昇るような気持ちで歩く姿が躍動感いっぱいで、目を奪われたシーンだった。

藤野からの誘いにより、家から外の世界へ出ることができた京本。

それから京本は、藤野の漫画の背景画を担当し、二人三脚で漫画家への道を邁進していく。

漫画雑誌に二人の作品が掲載されるようになり、名コンビとなり、その原稿料で二人で街に繰り出し遊ぶ場面はいかにも楽しそうで。

二人の友情にもぐっと来たし、何より北国の風景美などの映像が綺麗だった。

 

藤野さんのキャラは、最初あまり親しみを持てなかったのだけど、絵が上手くなりたいという必死な思いや、二人で漫画制作に没頭する姿からその気持ちが伝わって来て、音楽や美しい映像とあいまって、胸に込み上げて来るシーンが多々あった。

 

でも後半、えぇっ?と意表を突かれる展開になり…。この作品は、実際にあったあの凶悪事件での犠牲者への鎮魂の意味が込められた作品なのかなと感じた。

エンディングで流れた曲も、賛美歌のような歌声で、レクイエム風だったので。

原作を読んでいれば、もっと作品の意図が伝わってくるのかも知れないと思ったり。

それで、タイトルに込められた意味をちょっとネットで調べてみた。

https://news.goo.ne.jp/article/magmix/entertainment/magmix-240511.html

 この記事にあった、雑誌「SWITCH」7月号のインタビューでは、

原作者の藤本先生が『ルックバック』のタイトルには「背中を見る」「過去を振り返る」の他に「背景を見てほしい」という意味があったことを踏まえつつ、監督を務めた押山清高さんへの尊敬と信頼、そして「描いている背中だけをずっと見せることで単調さを表したかった」ことを語っています。

とのこと。確かにエンドロールでは、一日中机に向かう、藤野の背中ばかりずっと映している映像が続いていた。そして、背景画などを描き続ける、アシスタントへの尊敬の念も感じた。

また、映画の公式ホームページでの、原作漫画・藤本氏のコメントで、

「自分の中にある消化できなかったものを、無理やり消化する為にできた作品です。
描いて消化できたかというと、できたのかできなかったのかは、わからないですがこの作品を映像化するにあたり、たくさんの人が関わってくれたことには感謝しかありません。」とあった。

この、「消化できなかったものを無理やり消化するため描いてみた」という部分、気持ちが伝わって来てわかる気がした。

 

また、この「ルックバック」という作品タイトルは、実は、イギリスのロックバンド、オアシスの曲『Don't look back in anger』からきているという記事も目にした。

漫画原作のひとコマ目には「don't」という、教室の黒板の文字が、そして最後のコマには、「in anger」という言葉が潜ませてあるのだそう。なので、

Don't look back in anger(怒りで振り返るな)
という意味が込められたこのタイトルからは、作者の深い気持ちが込められているように思えた。

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ところで、このオアシスの曲『Don't look back in anger』で思い出すのは、90年代、当時私はオアシスファンになり、2002年に一度だけ、代々木第一体育館での来日公演を見に行ったことがある。そのコンサートで、この曲が大合唱になった記憶があって。

兄弟仲が悪かったギャラガー兄弟は、この年同じツアーでの福岡公演で、弟のリアム・ギャラガーが途中退場したとのニュースがあったのも憶えている。

オアシスは特にビートルズをリスペクトしていて、曲も数曲カバーしていたり、リアムの歌い方はジョン・レノンみたいだった。

先月末開催された「フジロック」では、兄のノエルが久々に出演して、懐かのオアシスのこの『Don't look back in anger』と、私がオアシスファンになったきっかけの『Stand By Me』など、懐かしのナンバーもやったとのニュースを見て、行きたかったなぁと思った。

(と、話が逸れてしまいましたが…)

漫画制作に没頭しているこの主役二人の少女たちを見ていて、私も小学校や中学時代、漫画家に憧れていたことを思い出しながら観ていた。

ケント紙にペンで描いた漫画を少女漫画誌に応募したこともあったっけ。賞に引っ掛かりもどうもしなかったけど。

小学校卒業文集も、将来は漫画家になりたいと、4コマ漫画も一緒に載せたり。中学時代も4コマなどよく描いて、同じ趣味の友達と見せ合ったりしていた。

自分の子どもたちも、小学時代は4コマ漫画など描いていたし、子供にとっては漫画家は、今も昔も憧れの職業なのだろうな。そういえば私の父親は、私のとは比べ物にならないくらい水彩画も漫画も上手かったっけ。

 

映画観てきたよと長男にLINEを送ったら、この作品を2回観ている長男は、「劇中のこの鎮魂歌のような曲は、作者が原作を描きながら聴いていた音楽だそう。原作で描かれていない部分が、映画監督の素晴らしさだと、原作者も唸っていたみたい。」とのこと。

この返事が来た今朝、なんと長男夫婦は高校野球の決勝戦を見に、急きょ年休を取り、大阪入りしていたのが分かってびっくりだった。前から練習試合も時々応援に行っていたようだけど。

長男は、私が生まれ育った実家のそばに住んでいるのだけど、「関東第一高校」はその近くで、私も中学校へはこの高校の前を通って通っていた。

「関東第一」は、共学になるまでは「関東商工」という名の男子校で、吹奏楽では私が子供の頃から有名で、吹奏楽が全国大会で優勝したときは、近所のメイン通りをパレードしていたのを憶えている。

なので、前回記事に書いた小岩でのライブ時は、自分の歌の前のMCに「隣の駅で生まれ育ったので、関東第一応援しています。球児に負けないように元気に歌います。」と言ってから歌ったのでした。

ということで、惜しい試合でしたが、

関東第一高校、準優勝おめでとうございます!」

(今朝、長男から送られてきた写真です。)