つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

映画『すずめの戸締まり』で気になった「要石」や「後ろ戸」

既に多くの方がブログに感想を書かれていますが、私も先月中旬に観に行き、簡単な感想を下書きに記しておいたものの、バタバタしていてまとめるのが遅くなってしまいました。

「過疎化や災害により増え続ける日本の廃墟を舞台に、喪失の記憶を忘却した少女(鈴芽)と、椅子に閉じ込められてしまった青年(草太)の、それぞれの解放と成長の旅の物語」

九州の静かな町で生活している17歳の岩戸鈴芽は、”扉”を探しているという青年、宗像草太に出会う。草太の後を追って山中の廃虚にたどり着いた鈴芽は、そこにあった古い扉に手を伸ばす。やがて、日本各地で扉が開き始めるが、それらの扉は向こう側から災いをもたらすのだという。鈴芽は、災いの元となる扉を閉めるために旅立つ。

(あらすじは、シネマトディより抜粋)

 

新海誠監督作品は、『君の名は』『天気の子』と観てきたので、こちらの新作も気になっていました。

『君の名は』では、それまで見たことないような映像美に圧倒され、ストーリーにもRADWIMPSの曲にも、とても感動したのを覚えていますが、『天気の子』ではそこまでのインパクトはなかったような…

こちらの新作では、やはり自分の中で『君の名は』を観たときの衝撃を越えることはなかったけれど、その映像も幻想的で素晴らしく、『君の名は』などと同じく災害をテーマにしていて、心揺さぶられる場面も多々あり心に残る作品でした。

 

作品序盤で、草太を椅子に変えてしまった不思議な猫・ダイジンなど、分かりにくい点も色々あったのですが、映画館入口でもらったこちらの新海誠本」に、企画書やインタビューなど載っていたので、作品の理解を深めることができました。

 

作品の中で特に気になった、「後ろ戸」や「要石」について

日本中の廃墟にある「後ろ戸」を閉じる旅をしている草太。

それは、日本各地で起こる地震を「後ろ戸」というドアを閉めることで防いでいる。

しかもそれは、草太の先祖代々伝わる「閉じ師」という稼業だということが興味深く、ひょっとして、普段人々の目には触れない大変な仕事をしている人の中には、「閉じ師」も現実にいるのでは?と空想を巡らせたりしました。

ナマズではなく、ミミズが地震を引き起こすというのは何故か?と思いつつ、そのスケールの大きな映像は見応えがありました。

また、この「新海誠本」での、

災害装置としての「後ろ戸」は、そもそも古典芸能における概念であり、神や精霊に繋がる扉のことである。日本古来の芸術表現は「後ろ戸の神」から授かる超常的な力が源泉と考えられていたそうだ。

との記述部分に、とても興味を惹かれました。

 

そして作中、その扉を閉じておくための「要石」との言葉を聞いて、以前観光がてら参拝した茨城県鹿島神宮に、その「要石」があったことを観ながら思い出していました。

tabi-mag.jp

地震ナマズが引き起こされるという考えがあり、その大ナマズを押さえつけるための石がこの要石だそう。

下総国に多い地震を鎮めるために置かれた霊石であり、その鹿島神宮とすぐ近くにある千葉県・香取神宮の両方にある「要石」が、地震を起こすナマズの頭と尻尾を抑えているみたいで、この映画のクライマックス場面での、モチーフになっているのかも知れないと感じました。

ちなみに、香取神宮に置かれている要石は凸型で、鹿島神宮のは凹型であり、対になっているそうですね。

 

監督が、主人公と同じ世代の若者に伝えたかった震災の記憶

こちらの「新海誠本」でも、以前目にした新聞のインタビュー記事にも書かれていましたが、新海監督は、この作品を鑑賞してくれる最も多い世代であろう10代の若者に、東日本大震災のことを忘れて欲しくなく、または知らない世代に伝えるために、今書かなくてはという強い気持ちがあったそうで、その思いもこの作品からよく伝わってきました。

 

それもあってか、携帯に鳴り響く緊急地震速報の音声には、映画の中でもドキっとしたし、「大津波警報が発令されました」と、あのときの実際の放送の声のように感じられた場面では、言いようのない気持ちに駆られ涙があふれたので、自分でもそうなのだから、被災地の方々は、もっと重い気持ちになるはず、と気になった部分でもありました。

 

とはいえ、大災害に遭った土地の(記憶として?)人々の、「おはよう」「行ってきます」「行ってらっしゃい」など、日常の挨拶が交わされるその声や場面が特に胸に迫り、と同時に、何気ない日常を送れることはなんて幸せなことなのだと、改めてしみじみ感じ入りました。

なので、映画ラストの場面での鈴芽の「行ってきます!」の言葉には、特に心揺さぶられた場面でもありました。

そいういえば、亡くなった母の意識がまだあるとき、私が帰るときにかけてくれた最期の言葉が、珍しくはっきりした声での「行ってらっしゃい!」だったなぁなんてことも一瞬思い出したりして。

 

とりとめもない感想になってしまいましたが、美しくスケールの大きな映像と、心揺さぶられる場面やコミカルで笑える場面も多々あり、とても良い作品でした。

今作でのRADWIMPSの、場面に合った曲も心に残って。

声優では、鈴芽が旅の途中で出会う女性、二ノ宮ルミ役を担当した、伊藤沙莉の声だけはすぐに分かりました。

物語終盤、鈴芽の育ての親である岩戸環(声・深津絵里)と、鈴芽との場面も印象深く良かったなぁ。

 

こちらの映画は、横浜に住んでいる学生時代の友人たちと、久しぶりに会ってランチした後、みなとみらいの映画館で観てきました。制服姿の高校生たちも、連れ立ってたくさん来場していました。

 

横浜・ランドマークタワーの今年のツリーのテーマは、「ハリー・ポッター」だそうで、とても綺麗でした。

写真は明るい時間帯に撮ったので、ライティング・ショーは見られませんでしたが。