サバイバル・スリラー映画『オールド』
『シックス・センス』でお馴染みの、M・ナイト・シャラマン脚本・監督作品。
2021年制作、アメリカ映画。
冒頭、シャラマン監督自身から「スクリーンにお帰りなさい。」などの短い挨拶が映った。
バカンスを過ごすために海沿いのリゾートホテルにやって来たキャパ一家。
両親と11歳の娘、6歳の息子の4人家族だ。
一家を仰々しく出迎えるホテルの支配人とそのスタッフ。
まさにリゾートホテルって感じで高級感いっぱいのホテル。
一見幸せそうに見える家族だけれど、両親の会話からは不穏な空気が漂ってくる。
翌朝一家で朝食をとっていると、支配人が近寄って来て、「近くに凄くいいプライベートビーチがある。あなたたち家族に好感を持ったので特別にご案内しますよ。行ってみませんか?」などと話しかける。
美味しい話には裏がある、と感じる場面だ( ̄▽ ̄;)
一家はそのプライベートビーチにマイクロバスで連れて行ってもらう。
自分たちだけと思っていたら、他の何組かの家族も一緒だったことが分かる。
ホテルの運転手は、食料品やパラソルなど必要なものを皆に手渡し、夕方5時になったら迎えに来ると言って車で立ち去る。
その運転手役をシャラマン監督自身がやっていて、自作映画にいつもちょい役で少し登場していたのを思い出した。
といっても、私が観たシャラマン監督作品は『シックス・センス』『サイン』『ヴィレッジ』『スチュアート・リトル』の4本くらいだけど。
そのプライベートビーチは、ドーバー海峡、または屏風ヶ浦のような断崖絶壁に囲まれている。(似たような風景はその二つしか思い浮かばなかった^^;)
そのビーチの美しさに歓喜する一同。
でも女性の水死体が流れ着いたのをはじめとして、次々に不可思議な出来事に直面し、ビーチの異常さに気づき次第にパニックに陥る家族たち。
ここはたった一日で約50年の時が経ってしまう、時間が異常に速く流れるビーチなのだった。
キャパ夫婦も、少し目を離した隙に子供たちが5歳ほど成長していてその姿に驚愕してしまう。そして自分たちも時間と共に年老いていくことに気づく。
しかもこのビーチでは電波も繋がらず、脱出を試みても途中で意識を無くしてしまい逃げることが出来ず、八方塞がりの状態に陥ってしまう。
行くときは普通に行けたのに、戻ることはなぜ出来ないのだ?と不思議だった。
そうして極限状態に置いこまれていく人達の運命や如何に…。
という話の展開で、これ以上はネタバレになるので書けないけれど、ラストでは驚きの事実が明かされる。
その結末は、まさにタイムリーな話だなと思うと同時にぞっとした。
もしかしたら世界中で似たようなことが行われているのかも知れないと思うと。
人間のおごりというか、どんなに立派な仕事であっても倫理観が麻痺してしまっているのは恐ろしいと思った。
物語が進むにつれて、観ているうちに、こちら側も不安感が増し落ち着かない気分になって来たのは、不協和音のような効果音というかBGMのせいで、その音楽の使い方も上手いなと思った。
スピーディーな話の展開に目が離せなく、最初から最後まで画面に釘付けになってしまったくらい面白かったけれど、同じ監督作品でも、昔観た『シックス・センス』や『サイン』の方が私は好きだなぁ。
出演俳優で見たことがあったのは『ジョジョ・ラビット』に出ていた、トーマシン・マッケンジーや『ジュマンジ』シリーズのアレックス・ウルフ。それぞれ、キャパ家の成長した娘・息子役を演じていた。
トーマシン・マッケンジーは『ジョジョ・ラビット』で、ジョジョが恋するユダヤ人少女の役がとても良かったな。
『ジュディ・虹の彼方に』『ツーリスト』『ホリディ』など、好な作品にたくさん出ていたルーファス・シーウェルは、同じく謎のビーチに家族と共に来た心臓外科医の役だった。
作品の中心人物であるキャパ家の父親役ガエル・ガルシア・ベルナルと母親役であるビッキー・クリープスは、あまり見覚えのない俳優だったけれど、どちらもその役どころといい一番好感が持てた。
年を取り、物忘れが激しくなるのは過去の嫌な思いも忘れられる良い面もあり、この二人が夜浜辺で寄り添い過ごす時間は、急速な時間経過など感じられずゆったりした時が流れているようでいい場面だった。
作品序盤、色々伏線が張られていたので、これからご覧になる予定の方は最初の方から集中して観た方がいいかと思います。
ホテルの浜辺でキャパ家の息子が、ホテルで意気投合した同年代の男の子と共に、大人を見つけるたびに「名前は?仕事は?」とゲームのように聞いて回るシーンなども。
この謎めいた男の子は、ホテルの白人支配人の甥っ子のような設定だったけれど、シャラマン監督に似ているなと思った。
☆ ☆ ☆
本編前の予告編では、劇場版『きのう何食べた?』の予告もやっていた。
大好きなドラマだったから観てみたいけど、特に大きいスクリーンで観なくてもいいかなー、という気もする。
そういえばこのドラマで毎回登場していた「中村屋」というスーパーは、昭和22年から73年間開業していたけど、昨年閉店してしまったようだ。
私の実家の近くで、子供の頃から買い物していた馴染みの店だったので寂しい気分だった。
ドラマロケ中はエキストラ募集もあり、同じ商店街の人もエキストラで登場したなんて話も聞いたっけ。
果たして、映画の中で中村屋が映るのかどうか、他の人がどうでもいいようなことが気がかりな私(笑)
(昨年秋、閉店の貼り紙に見入る人たち。)