例年と違って9月に入ったとたん涼しいというか肌寒いくらいの陽気が続いている。
拍子抜けしたように一気に気温が下がり体は楽だけれど、急にパタッと夏が終わったようで寂しい気持ちにかられた。来週はまた暑さが戻るらしいけれど。
子供の頃は夏休みが終わりに近づくたび寂しい気分だったっけ。
夏休みといえば、子供の頃、課題図書を読んで作文を書く宿題は嫌いだった。
漫画は好きだったけど読書家だったわけでもなく、内容に惹かれる課題図書も少なくて、なので読書感想文も苦手だった。
大人の今は強制されず好きな本を読めていいなぁ。当たり前だけど。
先日、図書館の新着図書の中からリクエストして借りたこの2冊は結構面白かった。
『しない。』(群ようこ・著)
著者ならではの「しないこと」をひもといて見えてきた、ラクで快適な毎日を送るためのヒントが満載の16章からなるエッセイ。
「しない。」という端的なタイトルからしてインパクトがあり惹かれた。
「みんな、世間が作った、当たり前を気にし過ぎる。」
「人は、する、しないを選べる。」
「自分の人生は自分でしか選べないのだから、他人からなんと言われようと、法律に触れない限り、自分のやりたいようにした方がいい。」
イエスよりもノーの方が言いにくい世の中だけど、生き方は人それぞれだと自信を持たせてくれる、これら力強い言葉にとても共感出来た。
「通販」「携帯電話」「SNS」「ポイントカード」「クレジットカード」「結婚」などテーマは身近な題材ばかりなので、どの章もうんうん頷きながら興味深く読めた。
物を捨て過ぎて、後で困った失敗談もあり。
「必要のない付き合い」の章では、著者が以前感銘を受けた作家の言葉を引用して、仕事、プライベート含め「失礼にならないように断る方法」を身につけるべきだと説いている。そうでないと、
「いつまで経っても他人のペースに巻き込まれ続け、自分の時間を取られ、その結果辟易するばかりだ。」と言われていて、全くその通りだと思う。
自分の生きている時間は限られているのだから、自由な時間を気の進まないことで奪われるのは嫌だとの思いが、自分も年々強くなっていて昨年からは特にそう感じている。
この前友達が、断りづらい付き合いについて悩んでいたので、この本を勧めたいと思った。
その時の会話で思い出し友達に伝えたのは、以前読んだ心理学者アドラーの『嫌われる勇気』に出て来た一節で、
「あなたを嫌うかどうかはあなたの問題ではなく他人の問題である。」という部分。
自分が人に迷惑などかけてなければ、自分のことで他人がどう思おうが、それはその人自身の問題であり、自分とは関係ないと切り離してみると、他人の思惑を気にしないで過ごせるように思う。
この章では、ママ友同士の付き合いとか特に女性特有の面倒くささについても書かれていたけれど、皆、他人からの評価とか憶測が気になるから気乗りのしない付き合いでも断れないんじゃないかな。
自分が思っているほど、人は他人のことを気に留めていないようにも感じる。
って今の気持ちを、子供の頃から親や他人の顔色をうかがう癖がついていた昔の自分にも教えてあげたい(笑)
ところで「女性誌」の章で、著者は子供の頃、少女漫画誌より少年漫画誌の方が好きで『おそ松くん』は最高に好きだったそうだ。
思春期には『an.an』『non-no』などの女性誌にもハマったそうだけど、大学に入学してからは土田よしこの『つる姫じゃ~っ!』が始まり、それを読むために再び少女漫画誌を買うようになったとのこと。
著者は私より数歳年上だけれど、『つる姫じゃ~っ!』の名を最近の書籍などで目にしたのは珍しく、同士を見つけたような気分で嬉しかった。
『相談の森』(燃え殻・著)
文春オンラインの連載人生相談、「燃え殻さんにきいてみた。」に寄せられた問いに対して、自身も迷いながら答えた61篇のQ&Aが収録されている。
思わず笑っちゃうようなヘンテコな相談もあり、相談も回答も実にシンプルでサクサク読め、しかも燃え殻さんの回答がどれも温かい人柄が滲み出ているので、読んでいてほのぼのとした気分になれた。
一般的な悩み相談の回答のような、正論を押し付けるようなことも全然なく、燃え殻さんの人生観がよく表れていて、「決着のつかないことを抱えて生き始めた時に、あなたは本当の意味で大人になれると思います。」な~んて回答、かっこいいなぁと思った。
それら回答の中に、燃え殻さん自身の家族とのエピソードも登場するのだけれど、子供の頃、単身赴任中の父親に家族3人で会いに行ったときのことや、一人暮らしで人嫌いの祖父と最後に会った時のエピソードが心にしみた。
偏屈なその祖父が「帰りの新幹線の中で食べなさい。」と珍しく買っておいてくれた、玉子サンドと牛乳を渡してくれた時の強ばったその笑顔や、玄関先でいつまでも手を振り続けていたというその姿が、私にも既視感があり。
また、燃え殻さんが高校時代、学校に親が呼ばれる事態に陥ったとき、一緒に頭を下げてくれた母親に帰り謝ったとき、「家族は順番に迷惑をかけていいのよ。」と言ってくれたそうだ。
月日が流れ、現在闘病中のそのお母さんから「忙しいのにごめんね」と言われ、「家族は順番に迷惑をかけていいんだ。」との言葉を思わず返したそうで、だから体調不良の回答者にも同じ言葉をかけていた箇所などジーンと来た。
「間違った先にも人生がある。というが、日々はやってしまった失敗を抱えて、もしくは忘れたふりをして生きていくしかない。」
この部分を読んで、そもそもその「やってしまった失敗」自体が本当に失敗だったのかどうかなんて、ずっと後になってみないと分からないんじゃないかと思った。
「朝までこの森の中に」という本書前書きで、人生相談コーナーを依頼されたとき、自分は後悔も間違いも多い人間だから人の相談に乗るなんておこがましい気がすると思ったそうで、
「だからせめて相談の森に、朝が来るまで一緒にいることにした。必ず夜が来るように、必ず朝も来るのだから。」
という言葉にも人柄がよく表われていて好感が持てた。そんな謙虚な回答者だからこそ、まるで相談者の隣にいるような心に寄り添った回答ができるのだと思った。
また、回答の中に出て来た、
大切なことを決める時は「世間」「一般的」「普通」という言葉を使わずに説明できないとだめ。
という辺り、先に紹介した『しない。』の群ようこさんの考えと共通していた。
2017年刊行のデビュー作『ボクたちはみんな大人になれなかった』というベストセラー小説など他の著書も今度読んでみようと思う。
因みにこのデビュー作は、映画化され今秋公開予定だそうだ。
本書のイラストは、実際の燃え殻さんとよく似ているなと思った。