つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』久しぶりの映画館

 

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約3か月半ぶりに映画館で映画を観ることが出来た。

 

1週間前に公開されたこの映画、私も観たかった作品の一つだけれど、はてなの皆さんも続々と感想をアップされていてより楽しみにしていた作品だ。


映画館が入っているショッピングモールは以前のような賑わいに戻っていたけれど、映画館の入りはまだまだ戻ってなく、これからという雰囲気だった。


でも久しぶりに、暗くなった巨大スクリーンで映画の世界に浸ることが出来て、幸せなひと時を味わえた。

 

そしてこの映画自体、観た人を幸福な気持ちに包んでくれるような作品だった。

 

何といっても、全編まるでルノワールなどの絵画から抜き出て来たような、目を見張る美しい映像や素敵な音楽に、非日常感をたっぷり味わいながら楽しむことが出来た。

 

L・M オルコットの有名な自伝的小説『若草物語』をグレタ・ガーウィグが映画化。
舞台は19世紀のアメリカ。作家を目指している次女ジョーの視点から描かれた四姉妹を中心とした家族の物語。

 

 

若草物語』は子供時代に読んだけれど、その内容よりも、以前他の記事でちょっと書いたけど、その頃女子4人が集まると『若草物語』の四姉妹になぞらえ、お互いをあだ名で呼び合った記憶の方が鮮明だ。


その四姉妹の性格などからあだ名を決めたと思うけど、姉や従姉妹の間では私は内気で体の弱い「ベス」だったような気がする。


私を含め皆、活発で自立した精神の次女ジョーに一番憧れていたと思うので、高校時代、女子4人でビートルズの妻や恋人の名で呼び合った時に奪い合った人気の名前とジョーという名は同じ感覚だ。

 

私は虚弱体質ではなかったけれど、内気な性格で今と違い子供の頃は食が細かったので、顔は生まれつき丸くても子供時代はガリガリに痩せていた。


しかし、顔が丸いとなかなか痩せては見られないものである。


今は〇〇〇太りの影響もあり、丸顔に比例して順調に横に成長し続け食欲旺盛で困る。

 

おっと話が逸れてしまった。

 

私は、末っ子はベスだったと記憶違いをしていたけれど、この映画の三女ベスを演じた女優さんも、まるで四女のように幼く見えた。

 

ボーイッシュなジョーの髪型はショートカットではなかったっけ?


と思いながら観ていたら、ショートにした場面でハッと気付き、そうだった、こういう理由で髪を短くしたんだったと物語の記憶が蘇った。

 

それにしても映画の中のマーチ家の四姉妹。メグ、ジョー、ベス、エイミー皆揃いも揃って本当に美しい姉妹達だった。


女優に憧れている長女メグをはじめ、作家や画家やピアニスト、それぞれ様々な才能に恵まれていて、性格も皆個性的なのが、本当によくできている原作だったなと今更ながら感じた。

 

そして愛情豊かで素晴らしい母親役のローラ・ダーンも素敵だった。

年末に観た『マリッジ・ストーリー』でのやり手弁護士とはまた違った慈愛に満ちた美しさ。

 

話の終盤で、孤独感に苛まれているジョーへかけた母親の言葉も忘れ難い。

 

「彼のことを愛しているの?」と母がジョーに訊いたら、

「愛してるというより、今は愛されたいのだ。」との答えに、

「それは愛じゃない。」と言った一言。

 

物語は、7年前の過去の回想シーンと現在と場面が交互に切り替わるので、ちょっとこんがらがったりもしたけれど、回想シーンは懐かしさを感じさせる温かいセピア色で表現されていたように思う。

 

少し内容に触れてしまうと、クリスマスに母の提案で、お腹を空かせている隣人に自分達のご馳走をあげに行くシーンがあったのだけど、帰って来た四姉妹達を待ち受けていた自宅のテーブルいっぱいに出現していた新たなご馳走場面は、そのセピアカラーがまるで魔法にかけられたように一段と輝いていて、姉妹達の驚きと喜びも伝わって来て、観ているこちらまで夢心地になった。

 

長女メグ役を演じたエマ・ワトソンは、現在のシーンではくたびれた主婦の感じがよく出ていたけれど、回想シーンでは以前観た『美女と野獣』での輝きを思い出させる華やかさだった。

 

そしてジョーを演じたシアーシャ・ローナンは、何の映画で観た女優さんだったっけ?

とその時は思い出せずにいたのだけど、観終わって出演作調べたら、『ラブリーボーン』『つぐない』『グランド・ブダペスト・ホテル』『ブルックリン』『ゴッホ 最期の手紙』など過去色々観ていた。


『ラヴリーボーン』や『ブルックリン』は主演だったのに、気付かなかったとは。

大丈夫か、私!


でも、『ラブリーボーン』ではまだ少女の頃だったし、今回観て本当に美しい女性に成長されたのだなと思う。


『ブルックリン』とこの映画でのジョー役も、主人公の成長物語として共通していると思った。


そういえばこの女優さん、『ブルックリン』では瞳の青さが際立っていて、その瞳にインパクトある衣装が似合っていたような記憶があるけれど、この『ブルックリン』『グランド・ブダペスト・ホテル』『ゴッホ 最後の手紙』は、ストーリーは忘れていても、視覚に訴えるような映像美が印象深かったので、また観てみたい素敵な作品だったなと改めて思う。

 

ジョーに恋する、燐家の資産家の息子ローリーも観たことあると思ったら、『君の名前で僕を呼んで』に出ていた少年だった。


それはイタリアの風光明媚な景色をバックに同性同士のひと夏の恋愛を描いた作品でまぁまぁな感じだったけれど、今回デビューの頃のジョージハリスンにもちょっと似ているような、陰りのある美しさだなと感じ、序盤、ジョーとのダンスシーンも二人とも楽しそうで素敵だった。


姉妹の叔母を演じていたメリル・ストリープも、さすが存在感いっぱいだった。

 

この南北戦争下での温かい家族の物語は、北軍の従軍から帰って来たその父親も含めて、同じくアメリカが舞台の大好きだったドラマ、『大草原の小さな家』を思い出しながら観ていた。


このアメリカ西部開拓時代の家族愛を描いた物語も、三姉妹の一人であるローラ・インガルス・ワイルダーが書いた自伝的小説がもとになっていて、優しく逞しく温かい両親も、賑やかで華々しい姉妹のやりとりも共通している。

 


私はこのように、主に子供の頃の思い出などに思いを馳せながら観ていたのだけど、
この四姉妹と同年代の女性の皆さんは、きっとこの4人の誰かに自分を重ね合わせたり、現代にも共通している、女性が経済力を持つことの悩みや世間の眼からの生きにくさなど、心に刺さる部分がたくさんあるだろうなと感じた。

 

 

「悩みが多いから、私は楽しい物語を書く」

 

という、この最初に出て来た原作者であるオルコットの言葉が、見終えた後も心に残った。