つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

映画『エルヴィス』

 

 

「世界で最も売れたソロ・アーテイスト」としてギネス認定されていて、ビートルズはじめ名だたるアーティストに多大な影響を与えたエルヴィス・プレスリー

ジョン・レノンは、初めてエルヴィスの曲を聴いたときに衝撃が走り、大ファンになったという話を聞いたことがある。

私の中では、数々の有名曲とともに、映像の中で歌うもみあげがあるその容姿。亡くなる前はかなり肥満気味だったということが思い浮かぶという程度で、その人となりについてはよく知らなかったけれど、今回観に行って、改めて伝説のスーパースターと言われるその素晴らしさと、裏側での苦悩を知ることができた。

解説: 「キング・オブ・ロックンロール」と称される、エルヴィス・プレスリーの半生を描く伝記ドラマ。ロックとセンセーショナルなダンスで、無名の歌手からスーパースターに上り詰めていくエルヴィスを映し出す。監督などを手掛けるのは『ムーラン・ルージュ』などのバズ・ラーマン。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』などのオースティン・バトラーがエルヴィス、『幸せへのまわり道』などのトム・ハンクスがそのマネージャーにふんしている。

yahoo!映画より)

 

最初から最後まで、トム・ハンクス演じる悪徳マネージャー、トム・パーカー大佐の視点で描かれたエルヴィスの伝記映画だった。

久しぶりに観たトムハンクス!確か前回は2年前観た『幸せへのまわり道』だったけれど、「あれからこんなに太って老けてしまったの??」とギョッとしたけど、特殊メイクなのでしょうね^^;

 

やはりなんといっても、エルヴィス役オースティン・バトラーのパーフォーマンスと歌声に始終圧倒されっぱなしで、そのステージ映像は感動的だった。

その独特なパフォーマンスが世間の批判を浴びて、警察の監視下で行われることになったスタジアムでのステージ。

マネージャーからの忠告を無視して、「誰が何と言おうと自分の声に従え。」と歌いだしたシーンは、その場にいた観客と同じ瞬間に立ち会えた気分で興奮した。

同時に、テネシー州メンフィスの片田舎で生まれ育ったエルヴィスの音楽の原点は、黒人音楽にふれて衝撃を受けた子供時代、地の底から身体全体にリズムが伝わってくる様子が、エルヴィスのあのパフォーマンスの原点になっているのだろうと感じられた場面でもあった。

 

人気が出始め「骨盤のエルヴィス」と揶揄されるようになったという、セクシーな腰の動きで女性たちを熱狂させる場面では、その女性たちの反応が滑稽なほど面白く描かれていて、つい噴き出してしまった。

 

エルヴィスがトム・パーカーに見いだされた後、人気スターになっていく姿は、ナイーブで線の細い青年だったのが、徐々に本物を彷彿させる貫禄ある容姿に変貌してきたところも凄いなと感じた。

往年の黒人アーティストも色々登場していて、特に親しかったらしいBBキングとのやり取り場面も良かったし、エルヴィスのステージ場面意外でも、黒人アーティストたちのR&Bなどの曲は、とてもかっこよくてワクワクした。

 

(以下、自分が知らなかったエピソードが多く含まれているので、これから見る予定の方はご注意を。)

 

エルヴィスには双子の兄弟がいて、生まれて直ぐに亡くなってしまったそうだ。

だから両親からは、お前には二人分の力があると常に励まされてきた。

その愛して止まない母もエルヴィスの徴兵をきっかけに亡くなってしまう。

58年に徴兵制を受け入れなければならなくなったその経緯や、2年後除隊しドイツから帰った後は、映画界に活躍の場を移したそうだ。

 

キング牧師ケネディ大統領の暗殺事件など、世界を震撼させたニュースや、ビートルズローリング・ストーンズアメリカ上陸で沸き立つニュースなども随所に挟み込まれていたので、エルヴィスが活躍した当時の社会情勢・時代背景もよく分かった。

ビートルズが全米ツアー中に、憧れのエルヴィス邸に緊張の面持ちで会いに行ったのもこの頃だったのだろうな、と観ながら思ったり。

映画制作は思うように行かず、69年にラスベガスのステージに歌手として復活を遂げた、その時の裏事情もよく描かれていた。

その頃、エルヴィス自身ワールドツアーを希望しており、日本にもとても来たがっていて、でもそれも叶わなかった事情も分かり、心底気の毒に思えた。

日本に来日していたら、ビートルズのときと同じように凄い騒ぎだったんだろうな。

 

倒れても注射で無理やりステージに立たせるように仕向け、エルヴィスの家族も上手く丸め込んでいたマネージャーのくせに、言い訳がましく思えたけれど、

42歳の若さで亡くなってしまったエルヴィスを殺したのは、マネージャーの自分だったと言われたけれど、そうではなく…とトムが語っていたくだりは印象深くもあった。

それは、エルヴィスはステージでの観客への愛が強すぎ、麻薬状態のようになっていて、ステージとステージの間のわずかな空白時間でも、堪えがたい孤独感に苛まれていたという。

トップスターが抱えた底知れぬ孤独感や、そのトップスターに群がり搾取していく取り巻きは、今まで観てきたアーティストの伝記映画でも同じようだったけど、エルヴィスの場合もその辺の裏事情があったのが分かった。

愛するお母さんが早くに亡くならなかったら、もっと長生きできたのではないかと思えたり。

また、トム・パーカーは悪徳マネージャーであっても、エルヴィスのことを愛していたことも観ていて感じられた。

 

終盤、ご本人のラストステージ映像が映り、「アンチェインド・メロディ」を歌う渾身の歌声は心震えるような感動場面だった。

 

白人のカントリー音楽と黒人のR&Bを融合させ、独特なスタイルのロックンロールで世界中を魅了したエルヴィス。

作品で描かれていたことをきちんと把握できたわけでもないけど、そのステージと人生を垣間見られ、十分堪能できた魅力ある作品だった。

ゴージャスなエンドロールもステージのような豪華さで楽しめた。さすが『ムーラン・ルージュ』『華麗なるギャツビー』の監督。

エルヴィスの妻となる、プリシラ役のオリビア・デヨングも、美しく好感持てる女優だったな。

 

余談ですが、数年前、エルヴィスのそっくりさんが出る「Rock a Hula」というショーをハワイで見た。

マイケル・ジャクソンのそっくりさんも出て、どちらもよく似ていて歌もバツグンに上手かっただったのだけど、エルヴィスのそっくりさんは、この映画後半、ホテルでのショーのように、客席まで来て握手をしてくれるサービス精神旺盛なところも似ていたと、この場面を見て思い出した。

(ロッカフラ・ショー)


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「エルヴィス」というより、私は昔からずっと「プレスリー」と呼んでいたなぁ…