先月観に行き、感想が下書きに保存したままになっていた、映画二作品の感想です。
映画『COUNT ME IN 魂のリズム』
ロック界を代表するドラマーたちにスポットを当てたドキュメンタリー。
インタビューシーンが多かったけど、ドラマーたちの深いドラム愛を感じる作品だった。
作品序盤、子ども達が初めて親からドラムセットをプレゼントされたときの、興奮や喜びを爆発させてるシーンは、微笑ましかった。
さすがアメリカなど海外では、ドラムセットを置けて練習できる環境の家も多いのだろうな。
(以下、印象に残ったシーンです。)
「チャーリー・ワッツ(ローリング・ストーンズ)のドラムは、洗練された雑さ。」とのあるドラマーの言葉は、まさにぴったりの表現だと感じた。
ストーンズの曲は雑さというか、ルーズさが魅力でもあるので。
また、チャーリー・ワッツのドラムは、「テンポ103から始まり終わりは109くらいになっているときがあるけど、ワッツの場合は全然走っているように感じない。」と評していた。
ローリング・ストーンズのようなノリの良い曲は、バンド全体的に速くなりがちだろうし、ボーカルが走ると、歌に合わせると思うんだけど…。
クイーンのドラマーであるロジャー・テイラーは、昔、フレディ・マーキュリーからの勧めで、初めてジョン・ボーナム(レッド・ツエッペリン)の演奏を目にしたそう。その時の様子を熱く語っていた。この作品で登場したジョン・ボーナムの演奏シーンも圧巻だった。
「ザ・フー」のキース・ムーンにスポットを当てた場面も印象的だった。
ドラムも家具も何でも壊す「壊し屋」というあだ名がついていたそうだけど、ステージ上だけでなく、ホテルの窓から家具を投げるシーンを、実際映像で目の当たりにすると、さすがにやり過ぎでは?と、びっくりだった。
ザ・フーといえば、リンゴ・スターの息子であるザック・スターキーがドラム担当したザ・フーを、横浜でのフェス「ロックオデッセイ」で、目撃できたのは今でもいい思い出。
その時の自分はまだドラムを始めていなかったけど、ドラムは昔からずっと憧れていた。子供の頃から、盆踊りの和太鼓の音にもワクワクしていたので。
ブログに以前も書いたけれど、私がドラムを始めたのは、ビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」を叩いてみたかったから。
その頃、最初はもっと簡単な曲から挑戦すべきと、ベテラン女性ドラマーから言われたけれど。
できれば、チャーリー・ワッツと、リンゴ・スターのインタビュー場面も見たかったな、と。チャーリー・ワッツは2年前に亡くなってしまったけれど。
リンゴといえば、ポール・マッカートニーのドラマーで、来日公演でもお馴染みのエイブ・ラボリエルが、ビートルズ時代のリンゴ・スターのノリノリのドラム姿を、始終楽しそうに話している様子は、とても微笑ましかった。
他のブロ友さんも書いていたけれど、女性ドラマーが、「男性がギターを弾くのは女性にもてたいから。女性がドラムを叩くのは、ただ叩きたいから。」という言葉が心に残った。
確かにそうかも知れない。男性がギターを始めたきっかけは、女子からもてたかったからというのが、私の知り合いでも多いので。
作品の最初と最後は、パーカッションで輪になって皆で打ち鳴らす「ドラムサークル」場面で、これも懐かしく感じた。
「ドラムサークル」とは、皆が輪になって、即興的につくりあげる打楽器・パーカッションのアンサンブル。
ドラムを始めた頃、私も友人の女性ドラマーに誘われて、隣の市の会館にある音楽室で「ドラムサークル」に何度か参加したことがある。
その時のファシリテーターが、ボンゴやコンガなどの打楽器ほか、あらゆる音の出る楽器を色々持って来ていて貸してくれた。
ファシリテーターの人の指示で、一斉に叩いたり、順番にソロを回したり。
お祭りでのサンバカーニバルや、フジロックでも、「ドラムサークル」のイベントがあるそうで、あちこちのイベントに参加している人が多かった。
ある程度の人数がいると迫力があり、グルーヴ感も生まれ楽しいけれど、人数が少ないとつまらないので、数回参加しただけで行かなくなってしまったっけ。
映画『オッペンハイマー』
【あらすじ】
第二次世界大戦中、「マンハッタン計画」に参加し、世界初の原子爆弾の開発に成功した、アメリカの物理学者のオッペンハイマー(キリアン・マーフィ)。
しかし実際に原爆が広島・長崎に投下されると、その惨状を知り苦悩する。
戦後、さらに威力のある水素爆弾の開発に、反対の姿勢を示したことから追い詰められていく。
『COUNT ME IN 魂のリズム』の上映時間が85分間で短かったのに対し、こちらは180分という長さ。
この映画を観た一か月ほど前に、NHKでオッペンハイマーのドキュメンタリーや、「クローズアップ現代」での、クリストファー・ノーラン監督インタビュー番組を観た。
なのでもう、この映画は観なくてもいいかなぁと思っていた。
でもあまりにも話題になっていたので、やはり観てみることに。
私は通常のスクリーンで観たのだけど、IMAX上映もされている意味が、始まって直ぐに分かった。
オッペンハイマーの脳内が、映像となって映し出されるので、最初から核爆発の炎の中のような映像や宇宙の星々のような映像も、時どき挟み込まれていたので、IMAXだとより迫力ありそうだ。
最初の核爆発のような炎は、至近距離で見る太陽のようにも見えた。
映像的には特に、「マンハッタン計画」での、原爆実験シーンは凄まじかった。
時間軸が行ったり来たりしたり、スパイ容疑をかけられたオッペンハイマーに対しての取り調べや、審議会のような場面が長く、その辺りよく理解出来なかった。
他のブロガーさんも書かれていたけれど、見終わって色々調べたら理解できたので、予習していけば良かったと感じた。
マンハッタン計画での原爆実験が成功したのが7月15日。それから僅か一か月も経たないうちに、広島・長崎に原爆が落とされたのだなと改めて思った。
その実験成功を喜ぶ現地のアメリカ人たち。
どんな災いが及ぶものかも分かっていない民衆。
生まれた場所や時代が違えば、自分もその喜ぶ中にいたかも知れない。
そういう気持ちもひっくるめて、自分が人間であることに対して、恥ずかしい気分に駆られた場面だった。
坂本龍一さんの残された日々を綴った、NHKドキュメンタリー番組の中での、「人間はどこで間違えてしまったのか」という言葉が頭を過った。
悪魔のようなこの原子爆弾の開発もその一つ。
最終会議場面で、原子爆弾落とす候補地は12か所あったという。
そのうちの一つである「京都」は、「重要文化財がたくさんあり、新婚旅行でも行って素晴らしい場所だったから避けよう。」との生々しい会話も…。
ドイツが降伏したから日本での投下は止めよう、との意見もあったのに。でも、つくったからには何としてでも試したいのか?
前評判通り、直接原爆投下やその後の悲惨な状況は一切描かれていないけど、監督のインタビュー番組では、オッペンハイマーを讃える講演会の観衆の中に、監督の娘が、ケロイドの顔で出演していると言ってたので、それはこの場面だったのだなと分かった。
ところで、このインタビュー番組で、ノーラン監督が初めてオッペンハイマーの名を耳にしたのが、スティングの曲からだったというのが印象的だった。
印象的といえば、原爆投下実験直前、爆発により地球の大気にも引火し、地球も破壊しかねないかもという懸念があったと、オッペンハイマーが苦悩していた場面。そんな恐ろしい可能性があったなんて。
この作品は、オッペンハイマー自身に焦点を当てて描いているので、原爆投下後のオッペンハイマーの苦悩は伝わってきたけれど、あれでは原爆の恐ろしさは世界中に伝わらないという点で、私はやはり物足りない作品だと感じた。
かなり前に、マンハッタン計画での、動物や人体実験についても触れていたドキュメンタリー番組をみたことがあったけど、この映画ではそれは描かれていなかった。
原爆よりさらに驚異的な破壊力の水爆実験をした、その実験場の土地は、いまだに人が住めないと、その番組で言っていた記憶がある。
出演俳優では、久しぶりに見たマット・デイモン、見た目も貫禄がついたなって感じた。
後、『ボヘミアン・ラプソディー』で、フレディ・マーキュリーを演じていた、ラミ・マレックの登場にも、おっ!と思った。
クリストファー・ノーラン監督作品では、『TENET テネット』も壮大なスケールだったけど、ストーリー展開が目まぐるしく、一度見ただけではよく分からなった。
『インター・ステラー』や『インセプション』は、今でも心に残る好きな作品。
今月は気になる作品があっても映画館へ行けなかったので、来月は何か見に行けたらいいなぁ。