絵本『なみのむこうに』(ブリッタ・テッケントラップ・作)
ドイツ・ハンブルク生まれの絵本作家ブリッタさんは、ロンドンで絵を学び、現在はベルリン在住だそうです。
青を基調とした絵は、どのページもとても美しく、物語からは、哲学的な雰囲気が漂ってきます。この絵本に出て来る「海」とは、人生に例えている感じがします。
深く暗い海に、エラはたった一人で小舟に乗っています。
すると、海の中から「エラ、止まっていてはいけない。前に進まなければ。」という声が聞こえてきます。
「どうやって、どこへ向かえばいいの?」と、エラ。
「それは自分で見つけなさい。」と声は囁きます。
どこからか、小さな灯りをくわえた白い鳥が飛んで来て、「僕がついているから、君は勇気を出せばいいんだよ。」と、暗い海を照らしてくれます。
途中、イルカの群れやクジラもやってきて、エラを力づけてくれます。
海の中で光っている、たくさんのクラゲ達も現れたり、美しく希望にあふれた歌が聞こえてきたり…
「波を鎮めることはできないけれど、波に乗るやり方はおぼえられるよ。一つ一つ乗り越えていけばいいんだ。」
「怖がると波は大きく見える。でもどんなに大きく思えたものも、乗り越えてしまえば、ずっと小さく見えるのよ。」
というイルカやクジラたちの、励ましの言葉が心に残りました。
空から光が差し込み、ついにエラは自分の力で乗り越えることができます。
辺りが明るくなるにつれて、周囲には、自分と同じようにたくさんの子どもたちが小舟に乗っていて、自分は一人で旅をしていたのではないということが分かります。
ラストでは、明るい日差しのもとたどり着いた岸辺で、エラは他の子どもたちと一緒に、楽しそうにしている絵も素敵です。


(大きなクジラの頁は、本を縦にして読むようになっていました。)
この絵本は、先日、小学3年生の教室で朝の時間に読みました。
読み終えてから、女の子が、「鳥やイルカなど次々にやってきて、エラを助けてくれて良かったと思いました。」と、可愛い感想を述べてくれました。
この子供たちも、自分はひとりぼっちだと感じることが、これからもたくさんあると思うけど、周囲の皆も同じように思っていて、決して一人じゃないんだってことを感じてくれたらいいなと思います。
* * *
『とうふとみそのケンカ』(チャンキー松本・作)
絵本作家で、切り絵師でもある、チャンキー松本さんの紙芝居。
このお話は、広島県に伝わる民話だそうです。
こちらは今月、図書館での「読み聞かせ」で演じました。
1年前も、『こんやのおかず』という、豆腐とこんにゃくが対決する紙芝居を読みましたが、その作品にちょっと似ています。
舞台は朝早い台所。
豆腐と味噌が、お互い自分の長所を自慢し合い、言い合いになり、ついに取っ組み合いの喧嘩に発展。
そこに、コンニャクが「にゃくにゃくにゃく…」と音を立てて近づき、ケンカを止めに入り、「君たちは、大豆という同じ仲間から生まれてきた親戚だ。」と知らせます。
「自分たちが同じ仲間だったなんて!」と、目を丸くして驚く豆腐とお味噌。
さらにコンニャクは、「大豆一族には、納豆、おから、油揚げ、きなこ、高野豆腐、そして君たちもいて、お正月には、皆で集まって仲良くお祝いしている。親戚の少ないワシには羨ましい限りじゃ。」と。
豆腐たちは、「いろんなことを知るって大事!」
「知る知る…しる、おしる、おみそしる!」
さっきまで喧嘩していたふたりも、コンニャクも、同じお鍋の中でにっこり笑って、おいしいお味噌汁になりましたとさ。というお話。


(左の絵は、お正月に集まった大豆一族。)
豆腐と味噌が言い合いになる台詞を演じている時が、特に楽しかったでした。
いかにも憎たらしい口調なので。笑
作者からの後書きに、
「お互いを知ること、いろんなことを知ることは、平和につながる大切な一歩。」
とあり、全くその通りだなと感じました。
定員いっぱいの親子の皆さんが聞きに来て、楽しんで下さいました。
私も大豆一族大好きなので、大豆イソフラボン、欠かさずとっています♪