つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

7月に入ってから観た映画『COLD WAR あの歌、ふたつの心』『新聞記者』

 

ポーランド映画の『COLD WAR あの歌、ふたつの心』

 

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 ポーランド映画で初のアカデミー外国語映画賞に輝いた「イーダ」のパベウ・パブリコフスキ監督が、冷戦下の1950年代、東側と西側の間で揺れ動き、時代に翻弄される恋人たちの姿を、美しいモノクロ映像と名歌で描き出したラブストーリー。2018年・第71回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した。

ポーランドの音楽舞踏学校で出会ったピアニストのヴィクトルと歌手志望のズーラは愛し合うようになるが、ヴィクトルは政府に監視されるようになり、パリへと亡命する。夢をかなえて歌手になったズーラは、公演活動で訪れたパリやユーゴスラビアでヴィクトルと再会。パリで一緒に暮らすが、やがてポーランドに戻ることに。ヴィクトルは彼女の後を追ってポーランドも戻るのだが……。

(解説は映画comより)

 

 解説にあるように全編モノクロの映画ですが、音楽が素晴らしいとのことで、公開前からとても気になっていた映画です。

 

全編を通してのモノクロ映画って、学生時代はサイレントのチャップリン映画を名画座で観たものだけど、近年で記憶に新しいのは、数年前アカデミー賞を受賞したモノクロ&サイレント映画の『アーティスト』だったでしょうか。

 

これも美しいラブストーリーでしたが、今回の『COLD WAR あの歌、ふたつの心』ほど鮮烈な映像美を堪能出来るモノクロ映画は初めてで、画面に釘付けになりました。

主演の愛し合う男女、ヴィクトル役とズーラ役二人の俳優が美形で魅力的なのも、もちろんその要因の一つではありましたが。

 

時代は東西冷戦下の1950年代。二人は、ピアニストのヴィクトルがポーランドの民族合唱舞踊団で音楽監督になり、そのオーディションに来たズーラの美しい歌声に才能を見出し、それから二人が恋に落ち話が展開して行きます。

 

 舞踊団養成所でのダンスレッスンシーンや、民族合唱舞踊団での舞台、後半酔ったズーラが「ロック・アラウンド・ザ・クロック」の曲でノリノリで踊る場面など、一つ一つのシーンが美しく目に焼き付いています。

 

映画の舞台は、ポーランド、ベルリン、ユーゴスラビア、パリへと次々に移り変わって行き、時代にも翻弄されながら別れと再会を繰り返した二人の15年間を90分足らずの上映時間で描いていて、台詞も多くはないので、映像や音楽よりもやはりストーリー重視好みの方だと向かない映画かも知れません。

 

この映画では「つまらないシーンや会話で物語を進めたくない」という監督の意向のもと、極力情報量を排除した画面や物語の構成となったのだそうで、様々なテイストの音楽を使い分けることで、2人の存在する「時代」「場所」「想い」などを言葉で語らず音楽によって表現したのだそうです。

 

通りで、この映画の音楽の軸となる曲「ふたつの心」に乗せて歌うズーラの心情もよく表現されていました。

最初はポーランドでの民族歌謡として歌われていたこの曲は、使うシーンでアレンジが変わり、後半でズーラがクラブで歌う切ないジャズシーンが特に心に沁みました。

 

先ほど書いたようにストーリーよりも、まさに五感を刺激されるような音楽と映像美が楽しめる、余韻の残る映画でした。

そして、ポーランド語の響きが耳に心地良くそれも印象的でした。

 

 

 

☆もう一本は『新聞記者』

 

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東京新聞記者・望月衣塑子の著書を原案にしたサスペンスドラマ。国家の闇を追う記者と若手エリート官僚が、それぞれの正義を貫こうとする。『怪しい彼女』『操作された都市』などのシム・ウンギョンと、『娼年』『孤狼の血』などの松坂桃李が共演。『オー!ファーザー』『デイアンドナイト』などの藤井道人がメガホンを取る。


東都新聞の記者・吉岡(シム・ウンギョン)は、大学新設計画にまつわる極秘情報の匿名FAXを受け取り、調査を始める。日本人の父と韓国人の母を持ち、アメリカで育った吉岡はある思いから日本の新聞社に在職していた。かたや内閣情報調査室官僚の杉原(松坂桃李)は、国民に尽くすという信念と、現実の任務の間で葛藤する。

シネマトゥデイより)

 

 ブログ仲間smokyさんの参院選の前に是非!との映画感想を読んで、サスペンスタッチで面白そうだったので観に行って来ました。

 

まさに今観るべき映画で、政治に疎い私ですが決して難しくはなく、スリリングで本当に観て良かったと実感出来る映画でした。

 

東京新聞の記者・望月さんの同タイトル著書が原案ですが、中身はだいぶ違うフィクションだそうです。

 

映画は、自身の父親も新聞記者だった権力と闘う女性記者と、内閣官僚調査室で現政権に不都合なニュースをコントロールする任務に葛藤していた官僚・杉原の二人を主人公に描かれていて、二人が協力して真相を探る場面ではハラハラドキドキの連続でした。

 

タイトルの新聞記者よりも、内閣官僚調査室に勤務する杉原の苦悩の方がよりクローズアップされていて、家族思いでもある杉原の心情が観ているこちら側にもヒシヒシと伝わって来て苦しくなるほどでした。

その杉原役・松坂桃李は納得の演技だったのですが、女性記者役の女優さんの日本語がたどたどしかったせいか私には気持ちがあまり伝わって来ず、何故韓国の女優さんを起用されたのかその点はよく分かりませんでした。

 

映画では、ちょっと前に実際に起きた政治絡みの事件を色々モチーフにしていて、その裏ではどういう事が起きていたのかを連想させられ、空恐ろしい気持ちになりました。

よく知らないなかった内閣官僚調査室についても、この映画で知ることが出来ました。

 

 終わり方が唐突でしたが、この後の話の展開は、観た者の想像に任せるという監督の気持ちなのでしょうか。ラストでの松坂桃李の呟きと表情からちょっと想像出来てしまいましたが。

2年程前に観た、アメリカ政府による個人情報監視の事実を暴いた『スノーデン』や、やはりアメリカでの銃擁護派団体との対決を描いた『女神の見えざる手』などのスカッとした勧善懲悪のラストを期待してしまいました。


「誰よりも自分を信じて疑え」

「この国の民主主義は形だけでいいんだ」

という台詞が心に響きましたが、フェイクニュースも巷にあふれている情報過多なこの時代、偽の情報を見破るのも難しいですが、自分の頭で考え行動することが益々大切だなと改めて思うと同時に、この映画を製作・公開された監督・スタッフ陣は勇気があり凄いなと感じました。オススメです!

 

エンディングでの「Where have you gone」という主題歌も、この映画にピッタリで素晴らしかったです。

 

 

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