垣谷美雨さんの作品は、かなり前に『老後の資金がありません』を読んで、とても面白かった記憶があるけれど、それ以来だったかな?
『定年オヤジ改造計画』は、郷ひろみ主演のテレビドラマを以前観て、こちらも面白かった。
(昨年末に読んだ本です。)
共働き&ワンオペ育児を経て、定年退職を迎えた霧島郁子。
夫の田舎へ移住し、悠々自適な生活を送るはずが、待っていたのは閉鎖的な地域社会のしがらみばかり。失意の郁子を救ったのは、老齢の女性議員・市川ミサオだった。
彼女の後押しで市議会議員に立候補することになった郁子の運命は⁉
痛快選挙小説誕生!(あらすじは、文庫本の解説より)
定年後、夫の希望により、夫の地元にUターンした霧島郁子。
その地で偶然目撃した市議会で、若手女性議員が、年寄りの男性議員から時代錯誤的なセクハラを受けているのを目撃し、言い返せないその女性議員を叱ってしまう。
それを見たベテラン議員の市川ミサオから、市議会議員の立候補をけしかけられる。ミサオは、郁子の夫の元担任でもある。
この物語でのもう一人の主人公・由香は、この地で生まれ育ち、パートをしながら夫と共に小さな娘を育てている。夫の両親は近くに住み、義父はモラハラ気味の亭主関白。
義母が家出をしたことから、由香は偶然、郁子と知り合うことになる。
その頃、郁子は都会から来た生意気な女との噂が広まっていて、由香もそれを耳にしていたけれど、実際会ってみた郁子は、さり気ない気配りのできる、素敵な女性だと感じる。
やがて由香夫婦も郁子の選挙活動に協力し、手伝うことになっていく。
由香の夫が新婚のときに言ったという、「自分から犠牲になりにいくな。我慢を重ねて恨みをもつな。」という言葉や、「恨みを溜めるのはよくない。性格が歪むし、あなた自身の人生が台無しになる。」という台詞も心に残った。
由香はまた、郁子と出会ってから心が自由になったと感じる。
それまではこの閉鎖的な地域で、悪目立ちしないことが暮らしの最優先で、いい嫁さんだと周囲に思われるよう気を付けていたから。
話が展開していくにつれて、特に郁子とミサオのその行動力・快活さには、読んでいて本当にスカッとする場面が多かった。といっても、郁子は郁子で、当選してからがより大変で、眠れないほど悩んだり深く落ち込んだりもするのだけれど。
この地での市議会は、市議になったくらいで偉くなったと勘違いしているような、オヤジたちが牛耳っている。税金で海外へ物見遊山にも出かけている。
男尊女卑についてなどは、大袈裟に描いているように感じたけれど、「年寄りの議員は、女性議員が何をいってもウーマンリブと非難する。」「社会の変化を体感していない人にとっては、女性の反発が過剰に感じられる。」等など、なるほどと思ったし、選挙の仕組みほか、以下のことがらなど、読んでいて色々勉強にもなった。
選挙には、「出たい人より、出したい人を」。
政治家の男性の多くは、家事や育児を妻や母や娘に任せきりで生活を知らない。
保育士、介護士は、その責任の重さやスキルに比べて、信じられないような低賃金で雇用されている。それは、人間が生きていく上で避けて通れない、育児・家事・介護を、これといって取り柄のない主婦が無料でやっている価値の低い仕事だと、軽視されてきたのが、そもそもの原因。
男性議員は、道路やハコモノといった、ハード面の政治課題に力を入れる人が多い。
その一方女性議員は、保育園、社会福祉、保健医療、環境問題に重きを置いている。
どちらが大事という問題ではなく、限られた財源の中で、バランスの取れた価値観が不可欠。そのためにも、女性議員を増やさなければならなかった。
戦後の復興期に日本で初めて、便利な電気洗濯機が販売されたときは、男性たちがこぞって反対し、女が怠けてしまうと、販売を阻止しようとしたらしい。との話にはびっくりだった。
郁子が移住し、その地に新しい風を吹き込んだことで、ミサオ、由香、由香の夫、郁子の義母、由香の義母、その他色々な協力者が増えていき、勉強会をしたり、この地域を大きく改革していこうといううねりとなっていった過程が面白かった。
郁子に色々忠告したり励ましたりしてくれる、遠くの親友や後輩の存在も良かった。
郁子も、まさか自分が政治の世界に足を踏み入れるとは想像もしていなかったのだけど、郁子には元々その素質があったことにも納得だった。
そして、はてなのブログ仲間にも、そういった議員に向いている女性の方々が、数人おられるなぁと、読んでいて脳裏に浮かんできた。
【おまけの写真】
この前、出かけた先で見つけた、ひなたぼっこをしている可愛い猫ちゃん。
昨日、初めて利用した音楽スタジオにて。偶然私が着ている服の緑と、ドラム、壁の色が全く同じで、バンド仲間に驚かれて初めて気づき、思わず写真を撮りました。(^^ゞ
義母の家で、柚子の実がたくさん採れたので、柚子ジャムを初めて作ってみました。柚子大根は以前からよく作ってましたが。ブログ仲間の方々も、昨年・今年と柚子ジャムを作っておられる方が多いので、影響を受けて。お砂糖控えめにして、ちょっと苦みがあり美味しかったです♪