つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

映画『侍タイムスリッパー』

昨年、はてなブログの皆さんの間でも話題になっていたこちらの作品、気になりつつも遅れ馳せながらやっと観に行ってきた。

前回の記事に書いた「童心社」見学の後、「池袋シネマ・ロサ」にて鑑賞。

この作品は自主製作映画で、昨年こちらのシネマ・ロサ一館のみでの公開からスタートし、SNSなどで評判が広がり、全国300館以上で上映される大ヒット作となったそう。

そして先月発表された、「第48回アカデミー賞」での、監督・脚本・主演男優賞ほか、優秀賞7部門を受賞したとのこと。

調べてみたら、作品賞では、昨年観た中でも特に忘れがたい映画『夜明けのすべて』も入っていて、3月14日のアカデミー賞授賞式が楽しみ。

現代の時代劇撮影所にタイムスリップした幕末の侍が、時代劇の斬られ役として奮闘する姿を描いた時代劇コメディ。
幕末の京都。会津藩士の高坂新左衛門(山口馬木也は家老から長州藩士を討つよう密命を受けるが、標的の男と刃を交えた瞬間、落雷によって気を失ってしまう。目を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所だった…。

(映画.comより抜粋)

主演の山口馬木也さんは、以前見たことがあったように思うけど、ほとんど知らない俳優さんばかり。映画の中で、スター俳優を演じていた冨家ノリマサさんだけは、何度も観たことがある役者さんだった。

もちろんコメディ作品なので、笑える場面は随所にあったけれど、主役たちの気持ちが胸に迫って来てホロリとさせられる場面も多かった。

先ず、違う時代に来てしまった主役の高坂新左衛門の驚愕が面白かった。

その会津弁のゆったりした台詞回しも、何とも味わい深くて。

新左衛門が、世話になることになったお寺の住職夫妻と、一緒に食べたケーキの味の美味しさなどにむせび泣き、この時代の日本が豊かな国になったことを素直に喜んだりの場面も、素朴な人柄が伝わってきた。

お寺の住職夫妻のキャラクター自体も面白くて、その演技も含めてこの二人にとても好感が持てた。ベタでわざとらしいコント風場面でも、思わず噴き出してしまったり。

高坂新左衛門と、殺陣の師匠である関本(峰蘭太郎)との練習シーンも、コントを見ているようで面白かったな。

話が進むに連れて、高坂新左衛門が会津藩の悲惨な末路を知ることとなり、その胸中も胸に迫ってきた。私も若い頃、会津若松に旅行したとき、白虎隊のお墓や記念館など見学したのを思い出した。

 

作品中、一番心に残ったのは、クライマックスでの殺陣のシーン。その殺陣での足さばきなどの体さばきがなんとも美しく、見惚れてしまった。

真剣な目つき顔つきや、刀と刀がぶつかり合う音、その両者の気迫がビシビシ伝わって来て、昔から殺陣での血しぶきなどが苦手で、時代劇を敬遠してきた私であっても一瞬たりとも目が離せなく、引き込まれてしまった。

(時代劇でも、『超高速!参勤交代』や『雨あがる』などは好きな作品だったけれど…。)

主役の山口馬木也さんも然りだけれど、その場面での相手役の冨家ノリマサさんは、それまでの穏やかな表情とのギャップもあり、全身全霊からの気迫が伝わってきて、すごい役者さんだなぁと感じた。

冨家ノリマサさんが演じた風見恭一郎は、高坂新左衛門を見る眼差しも最初から温かく大らかであり、自身の考えやその苦悩含め好感が持てた。

それと、助監督役だった沙倉ゆうのさんも、自然体で良かった。

最後は、あ、そういうことだったのかと納得…(^^ゞ

 

エンディングでは、拍手が湧きおこった。

場内が明るくなった時にもまた拍手が…。

映画館ロビーには、この映画が掲載されている新聞記事が壁に色々掲示されていて、

「スターで映画を作るより、映画でスターを作った方が面白い。」という監督の言葉が印象的だった。

廃れる一方である、時代劇への愛やリスペクトもとても伝わってきた作品で、これからも多くの方に観て欲しいなぁと思った。

 

近所の遊歩道での梅。今年も綺麗に咲いていました。