つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

『死は存在しない』(田坂広志・著/光文社新書)

最先端の量子科学を基にした「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」を提示し、その考えのもとでは「死は存在しない」と説かれた一冊です。

(本書をこれから読まれる予定の方は、この記事読まない方がいいかもです。)

筆者は、本書を、次のような「問い」を抱かれた方々に読んでもらいたいと書いたそうです。

・「死」を直視すべきときを迎えている方々

・「科学」にも「宗教」にも疑問を抱かれている方々

・最先端量子科学の「仮説」に興味を持たれている方々

・人生で「不思議な体験」が起こる理由を知りたい方々

・肉親の「死」について切実な思いを抱かれている方

・「死」についての思索を深めたい方々

 

量子科学において、「真空」とは無ではなく、「量子真空」という、莫大なエネルギーが潜む場所がある。

このエネルギーのことを「ゼロ・ポイント・エネルギー」と呼ばれている。

これは無限のエネルギーである。

これは、現代の科学が認める「事実」だそう。

莫大なエネルギーが潜む場所というと、ブラックホールみたいな感じでしょうか。

そして、著者が本書で提示している「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」とは、現代の最先端科学が示している「仮説」だそうです。

「ゼロ・ポイント・フィールド」とは、

宇宙に普遍的に存在する「量子真空」の中にある場で、その中に、この宇宙で起こる過去から未来までのすべての情報(意識を含めて人の一生も)が、波動情報として記録されているのだそう。

この人生を終えると、私たちの意識の中心はこのフィールドに移り、いずれ「自我意識」を脱し、最後は「宇宙意識」へと合一していくのだそうです。

この世界に物質は存在せず、全て波動である。

この世界は全て「原子」で構成されていて、それはさらに電子や陽子、中性子という「素粒子」によって構成。

その「素粒子」の正体はエネルギーの波動であり「波動」に他ならない。

それゆえ、我々が日常的に感じている「物質」はミクロの視点から見ればすべて波動で、「目に見えない意識」も波動である。

この「目に見えない意識」も「波動」だというのは、私も今まで、見聞きしてきました。

人の思いや、物からも、全て波動が出ていて、様々なことに影響を与え合っていて、「引き寄せの法則」などもその「波動」によるものだということも。

なので、元々興味ある話題だったので、よくわからない点は色々あったものの、サクサク読めました。元々、なぜ自分はここにいるのかなど、この世界の成り立ちに興味があったので。

 

著者の田坂氏は、科学者の立場から、「死後の世界は存在しない」との考えを長年持っていたそうですが、科学では説明できない自らの意識の不思議体験により、考えが変わって来たそうです。

それらの現象は、全てこのゼロ・ポイント・フィールドによって説明できると説かれています。

本書では、誰もが少なからず体験している、「予感・予知・既視感・以心伝心・シンクロニシティ共時性)」などの、意識の不思議な現象を、ご自身の体験を交えて説明しています。

これらの不思議な現象は、意識がこのフィールドと繋がることで、必要な情報や叡智を引き寄せ、この場所を通じて互いの意識が結びつくからだとのこと。

作家などが書き始めると、「降りてくる」という現象も、著者自身も体験していて、なぜこのような内容の書物が書けたのか、後になり不思議な気持ちに駆られたことが何度もあったそうです。

また、前世を覚えている「生まれ変わり現象」なども、誰かの記憶と結びつく、このフィールドで説明がつくとのこと。(そう聞いてしまうと、ちょっとロマンに欠けますが^^;)

 

では、寝ている間に見る夢なども、寝ている間、このフィールドでの記憶と結びついて、私などは、リアルな知らない間取りの家などが、度々登場するのかも知れないなぁと思ったり。

著者も体験したような、意識の不思議な現象は、私も今までの人生の中で度々経験してきて、それは何故なんだろうと不思議に感じ、人は意識下で皆繋がっているという、「集合的無意識」のなせるわざなのかなぁと思っていました。

人や、本などのモノとの出会いなども、同じように不思議な縁を感じることがあります。

 

「ある種の物質は真空(無)から生まれ、真空へ帰っていくという不思議なプロセスが存在する。」

「肉体の死後、我々の意識は、その中心を、ゼロ・ポイント・フィールド内の『深層自己』に移し、生き続けていく。そこであらゆる知識や叡智と触れ合い、相互作用しながら変化し、学び、成長していく。」

なので、「死は存在しない」との著者の考えですが、

「フィールド内で、我々の意識は『私』を忘れ、『すべて』を知る。」という部分、すべてを知ることが出来るのは嬉しいけれど、そのフィールドに移ると、いずれ自分自身を忘れてしまうのだなぁと寂しい気もしました。

でも逆に、今ある私自身を生き、それを意識できるのは今生限りだから、残された人生も、周囲の人たちとの関係も大切にしなければと、今を愛おしむ思いにも駆られます。

著者も、イタリア映画『道』での、

「この小石でもなんかの意味がある。これが無益なら全て無益であり、空の星だって同じ。」との台詞を引用して、今、生きにくさを抱えている人たちに、

あなたの人生には「大切な意味」がある。

だから、もうしばらくあなたの人生を生きて欲しい。「魂の成長の道」を歩んで頂きたい。

なぜならあなたはこの「宇宙意識」そのものなのだから。

と語りかけています。

この本には、他にも色々な映画作品が登場し、その部分も興味深かったでした。

惑星ソラリス』『トランセンデス』や、時間の捉え方については、インターステラーなど。

 

本書によると、宗教の世界でも、このゼロ・ポイント・フィールドが昔から語られていたのだそうです。

仏教の「唯識思想」や、「古代インド哲学」では「アーカーシャ思想」が、宇宙誕生以来、全ての存在についての情報が、記録されている場があるとされているのだそうで。

 

このゼロ・ポイント・フィールドについては、自分の中で、上手くイメージできないので、半信半疑ではありますが、本書を読んで、今まで見聞きしてきたこと、漠然とそうなのではないかと感じてきたことの共通点は多々ありました。

祈りや瞑想によって生まれる「静寂意識」の世界は、このフィールドと繋がりやすくなるので、祈りや瞑想で心の技法を積極的に実践すると、このフィールドを通して「直観」が降りてくる。

との部分を読んでも、

自分も習慣にしている瞑想をすると、直感が冴えて来たり、表層での意識と深層の意識が統合され、本来の自分が望む自身として生きられることが出来ると聞き、多少実感もしています。

ネガティブ思考はネガティブなことを引き寄せ、ポジティブ思考はポジティブな良い運気を引き寄せるので、常にポジティブ思考が大切とも書かれていましたが、

このポジティブ思考が大切だとのことも度々聞きますし、以前ブロ友さんの紹介で読んだ、中村天風『運命を拓く』という書籍でも、そのことを強調されていたのを思い出しました。(今話題の、大谷翔平選手も愛読していたそうです。)

『運命を拓く』『あちらにいる鬼』~ブログ仲間のオススメ本。 - つるひめの日記

 

また著者は、

人類は、いまだ自我意識(エゴ)に賢明に対処できていないので、争いは絶えず、環境破壊は限界まで来ている。なので、「現代の人類は、数千年の歴史を歩んでもまだ『前史』や『幼年期』の段階である。」と言われていて、

これらの問題を解決していくためには、新たな技術の開発などではなく、「科学と宗教の融合」を目指すことが大切と説かれています。

「人類全体の意識の変容」や「人々の価値観の転換」が大切であり、それには、長年の宗教と科学の対立に終止符を打ち、その間に「新たなる橋」をかけることが重要とのこと。

これが成し遂げられれば、人類の「前史」の時代が終わり、「本史」が幕を開けるとの終盤の言葉は、心に深く残りました。

戦争も、なぜこんな愚かなことが繰り返されるのだろうと、誰でも感じていると思いますが、それは、人類は未だ、前史や幼年期の段階だからだということにも納得でした。

 

ゼロ・ポイント・フィールドについては、よく理解できなくても、著者の考えには共感できる部分も多々あり、死後に対する新たな考え方で、とても興味深く読むことができました。

* * *

<おまけ>

最近気になっている曲

アイルランドのロックバンド、フォンテインズD.C. "Televised Mind"

youtu.be

「エコーチェンバー現象」(狭いコミュニティで、自分と同じ意見・考えを見聞きし続けることによって、自分の意見が増幅・強化される現象)を歌った曲だそうだけど、イントロのギターからしてかっこいいです♪