「あらゆる問題解決をしてきた、台湾IT担当大臣オードリー・タンの思考法を大公開。」という内容の、普段あまり手に取らない本を読んでみました。
その名やお顔はコロナ禍から色々なメディアで見かけるようになり、どんな考えを持った人なのか興味があったので、図書館の新着案内にあったこちらの本を予約してみました。
オードリー・タンは、台湾最年少の若さでデジタル担当の政務委員(閣僚)に就任し、新型コロナ対策にも貢献した天才プログラマー。
ですがこの本によると、生まれつき重い心臓病を患っていたそうで、天才であるがゆえに小学校では壮絶ないじめにあい、中学校を自主退学し、15歳で起業するなど、ほとんどの人が経験することのないような成長過程を体験したそうです。
そしてトランジェスターであることを公表後、30代でビジネスを引退して、公衆に奉仕する者として生きることを決意されたそう。
ご自身のモットーである「全ての人の側に立つ。」という信念は、そういった辛い体験に基づかれ、「相手の立場に立つ。」ということが常に念頭に置かれ習慣化しているのだろうと感じました。
また、インタビュー中にインタビュアーが何度も耳にしたという「私は好奇心の塊です。」という言葉。
その好奇心も、彼女を突き動かす原動力になっているのだろうなと、読み終えて感じました。
本書では、4つのステップと15個のキーワードを軸にして、自身が問題を解決するプロセスを探っていく構成になっています。
ビジネスに関する部分は興味無いので、以下、自分が関心を持った箇所を重点的に抜粋し、備忘録としてまとめておきます。
<ステップ1 問題と向き合う>
キーワード2 傾聴によるエンパシー
・「傾聴」は問題解決の基本
自分の経験に基づいて問題を考える。
キーワード3 多重視点に立つ
『対決』から『対話』への転換は、この時代に生きる私たちの使命。
<ステップ2 問題を受け入れる>
<ステップ3 問題に対処する>
キーワード11 熟読
・難解な映画『テネット』をわずか2文でまとめるオードリー
・オードリー式高速スキャンの記憶法とは
<ステップ4 問題を手放す>
キーワード12 競走からの脱却
・競争以外の選択肢を探そう
・正常(ノーマル)という言葉に、ほとんど意義がなくなった時代
・外に出て遊び、考える時間の大切さ
・成績だけで子供を判断しない新教育改革
キーワード13自分と向き合う
・一人になって自分と向き合うメリット
孤独に向き合うと、想像力が養われるだけでなく、大脳の統合が進み、天武の才能や潜在能力が開花する。
・自分のための空間と時間を確保する
一人の時間にスマホをいじっているのは、一人の時間を奪われているのと同じである。
・睡眠は、自分と向き合い自己整合を行う希少な時間
キーワード14 至高の喜び
・オードリーの心を満たす「法喜充満」とは?
オードリーは常に体の栄養より心の栄養をより欲している。
台湾の仏教団体である法鼓山は、「法喜充満」を簡単に言うと、「仏教の教えを聴いて仏法を理解したことで、心に喜びが生まれること」と解釈している。
・欲望を満たすのとは異なる幸福感について
私(オードリー)にとって喜びとは「good spirit」、古代ギリシャでいう「ユーダイモニア」(幸福感)である。
ソクラテスの説明が一番ぴったりくるのですが、彼は人間の体は脳も含めてダイモーン(霊や魂)で満たされた運び手にすぎないと考えていました。
実際に機能しているのはダイモーン、つまり「霊」であり、肉体的な楽しさは一過性のものだから本物ではありません。
宗教用語を借りてユーダイモニアをなんとか翻訳してみると、「法喜充満」になるのでしょう。
「人間は『思考の運び手』に過ぎない。」
なのでオードリーさんは、承認や理解を求めず、ただ思考を伝える役割に徹すると言われています。
なぜなら満足感とは、外側から肯定されるものではなく、内在するものだから。
・苦しみも喜びも、どちらも大切
苦痛は心身における警報機でもあるので。
本書でオードリーさんは、ログアウトする(死ぬ)ときの世界が、ログインした(生まれた)ときよりもよくなって欲しい。と何度か言われていました。
キーワード15 死を見つめる
・人生における死の意味とは
・死ととなり合わせにあった幼少期
・毎晩眠ることは死と向かい合う練習
毎晩眠る前には心配事を手放す練習をしてみましょう。
・生き続けることには意味がある
個を超え、社会の人々との関わりを持つことが大切。
巻末は、人生相談に寄せられた10の質問への回答コーナーでした。
Q「自分の夢はどうすれば見つけられるのか?」
大前提として睡眠はたっぷり8時間取りましょう。
自由に空想できる時間を捻出しましょう。
漂っているような、混とんとした状態の中からでないと、ひらめきも新たな考えも生まれてこないから。
Q「人は何のために生きるのか?」
人が生きるのは、迷うため、迷いにじっくり向き合うためです。
生きる目的を失ってしまったときこそ、あなたの本当の人生の意義が姿を見せ始めるのです。
今の世界情勢を鑑みると、本文中これらの言葉が特に心に残りました。
「世界はもともと一つであり、いたるところに智慧はある。」
「『対決』から『対話』への転換は、この時代に生きる私たちの使命です。」
その「対話」も多重視点に立つことが大切なのだと分かりましたが、一刻も早く「対決」より「対話」が進んで欲しいですよね。
また本の読み方での、「オードリー式高速スキャンの記憶法」の箇所で、見開き2ページを2秒で読むというのも凄いなと感じましたが、読書においても傾聴を心掛け、執筆者の話の腰を折らない読書法しているという点が印象的でした。
読みながら直ぐに判断を下さず、ひたすら耳を傾けることが重要だそうです。
私自身分かったような、分からないような感じですが、読書も人との対話も傾聴が大事だという点は納得でした。
ソクラテスの部分は、ボランティアで一緒の、ソクラテスの弟子であるプラトン哲学が好きなアメリカ人女性にも話したら、とても興味深そうでした。
「ステップ4 問題を手放す」での、「競争からの脱却」「自分と向き合う」「至高の喜び」「死を見つめる」辺りが特に興味深く読めました。
コロナ禍以降増えた自分と向き合う時間は、人との距離を保つようになってから、一人の時間はかえって心地よいことを自分自身認識しているし、そう思っている人は多いように感じます。
なので、時間の使い方も以前より考えるようになったけれど、ひらめきが生まれる「ぼ~っ」としている時間も大切なのだ、ということが改めて分かり安心しました。
***************************************
昨日は、久々の下北沢で、久々のバンドでのビートルズイベントに参加してきましたが、対バンに知り合いのビートルズBBCバンドさんもいたので、好きなBBC曲もたくさん聴けました。
その中でやってくれた大好きな曲「Some Other Guy」と、自分がそのうち演奏してみたいなと思っている「Memphis Tennessee」を、「Live At The BBC」のアルバムから最後に♪
今日の午後は雨模様になってしまいましたが、近所のツツジもだいぶ咲いてきました。