7月に入って観たのがこちらのフランス映画、『ベルエポックでもう一度』。
ノスタルジックな雰囲気のこのポスターに惹かれ、見てみたいと思っていた作品。
フランスのセザール賞で、助演女優賞、脚本賞、美術賞の3部門を受賞したそうだ。
監督・脚本は『タイピスト!』などに出演した俳優でもあるニコラ・ブドス。
同じくフランス映画である『タイピスト!』も公開当時観て面白かった記憶があるけれど、このニコラ・ブドスさんがやった役は全然思い出せない( ̄▽ ̄;)
元売れっ子イラストレーターのヴィクトル(ダニエル・オートゥイユ)は社会の変化になじめず仕事を失い、妻のマリアンヌ(ファニー・アルダン)にも見放されてしまう。そんな彼を励まそうとした息子は、戻りたい過去を映画セットで再現する「タイムトラベルサービス」をプレゼント。
希望の日時を申し込んだヴィクトルは思い出のカフェで運命の女性と「再会」し、夢のようなひとときを過ごす。
(シネマトディより抜粋)
よくあるタイムトラベルものと違って、役者と当時のセットで戻ってみたい過去を体験出来るという設定が、今まで観たことないアイデアで面白いと思った。
主人公の妻に追い出されてしまったヴィクトルは、息子からのプレゼントである「タイムトラベルサービス」で、自分の人生を変えた運命の女性と出会った、1974年5月16日のリヨンのカフェでの再現を依頼する。
そのタイムトラベルサービスとは、息子の友人アントワーヌ(ギョーム・カネ) が社長をやっている『時の旅人社』のビジネス。
映画製作に用いる大掛かりなセットで、当時の台詞も含め、顧客の戻りたい過去をリアルに再現することが出来る。
指定されたホテルで着替え、髭を剃り、外見から若返りを果たしたヴィクトルは、ワクワクしながら、そのセットでつくられたリヨンのカフェに赴く。
1974年当時のリヨンの街並みの再現セットは、人々のレトロなファッション含めとても素敵だった。
そのカフェで働く人の会話もユニークで。
そこで、ヴィクトルの隣の席に座った若い女性が、ヴィクトルの妻マリアンヌの若い時を演じるマルゴ(ドリア・ティリエ)。
マルゴは「時の旅人社」社長アントワーヌの恋人でもある。
ヴィクトルは、マルゴを相手に過去のトキメキに浸っているうちに、本気でマルゴに恋をしてしまう。
このマルゴ演じたドリア・ティリエという女優さん、最初はそうでもなかったけれど、見ているうちに段々魅力的な女性に見えたきた。スカーレット・ヨハンソンに少し雰囲気も似ていて。
また、 ヴィクトルがマルゴの友人達と連れ立って出掛ける、マリファナパーティー場面での、マルゴが踊るシーン辺りで流れた『誘惑のブギー』が私にとってもとても懐かしく、そのシーンに曲がマッチしていてマルゴもより素敵に見えた。
監督の演出で赤い花びらが天井から舞ったり、映像的にも美しく印象に残った場面。
そのパーティーで、ヒッピースタイルの若者にヴィクトルが言った、
「君みたいな人達はいったいどこへ行ってしまったんだ?」
という質問に、本当にそういえば、70年代席巻していたヒッピー族はどこへ行ってしまったんだろう?と思った。
若い時の妻役を演じてくれたマルゴへの恋心によって、それまで冴えなかったヴィクトルが生き生きと輝いて行く過程が特に良かった。
意欲が湧いて来て、次々に描いて行くそのイラストもとても素敵で。
映画の中でも女優役のマルゴや、ヴィクトルの妻の心の揺れ動きなども印象的だった。
映画冒頭は意表を突かれる展開だったので驚いたけれど、大切な思い出を再現出来るという「時の旅人社」のビジネスは斬新で面白いと思った。
でも、私だったら、どの時代のどの場面をもう一度体験してみたいか?
と思った時に、タイムトラベルで実際のその時に戻れるならともかく、セットなどが当時とそっくりに再現されてても、周りは皆自分とは関係ない役者な訳だし、違和感いっぱいで満足出来ないんじゃないかなぁと感じる。
認知機能が衰えてきた場合なら、記憶を蘇らせる働きとして効果がありそうだけど。
その頃の思い出深い音楽がBGMで流れていたら、当時に入り込めるような気もすけれど。
ともあれ、70年代のお洒落な映像と懐かしい雰囲気にひたれ、軽く楽しめる作品だった。
ヴィクトルの妻役マリアンヌを演じたファニー・アルダン、観ていてずっと誰かに似ていると思ったら、ペギー葉山だった。あ、岡田茉莉子にも似ているような…
(ファニー・アルダンさん、岡田茉莉子さん、ペギー葉山さん。やはり岡田さんかな^^;)
挿入歌の『誘惑のブギー』は、70年代スペイン出身の女性デュオ・バカラのヒット曲。この曲と共に、暫し映画の世界に浸れる映像です。