つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

『希林のコトダマ』(椎根和・著)他を読んでみました。

 

先週末、「ブログを開設してから2年が経ちました。」とはてなブログから連絡が来ていました。

 

2年前に開設してからほぼ週1ペースの更新ですが、訪れて下さる皆さん、いつもありがとうございます!

これからも、マイペースで続けていけたらと思っています。

 

読んだ本の感想なども書こうと思いつつ、最近はつい先延ばしになってしまい、ブログに記録しておきたい本も溜まってしまいましたが、

 

先日は図書館で借りたこちらの『希林のコトダマ』(椎根和・著)を読んでみました。

 

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( 装丁は、希林さんのお孫さんの絵だそうです。)

 

樹木希林さんの本棚に残った最後の“100冊”を初公開!―自筆の雑記帳も~

 

雑誌編集者で、長年希林さんと親交のあった著者の「まえがき」にも書かれていましたが、 ものを持たない・買わない主義の希林さんは、所有する本をいつも100冊と決めていたそうで、新しく一冊買いたくなったら、その蔵書の中の1冊を人にあげていたのだそうです。

 

希林さんの本棚で最後に残った100冊を初公開して、本書ではその中の98冊を紹介していました。

希林さんは、自身が「言霊」を感じた本しか保存していなかったそうです。

 

私も物を持たないシンプルな生活は好きですが、常に整理整頓好きな希林さんは、家に絵も写真も飾らなかったというのには驚きでした。

 

紹介されていた希林さんの蔵書の中で、印象深かった本や文章を抜粋すると…

 

著者から希林さんに献本された『励ましてくれた言葉の数々』(三浦忠彦・著)では、

 

昔のドラマ『時間ですよ』でのプロデューサーである久世光彦から、その頃希林さんへのこんなアドバイスが取り上げられているそうです。

 

『自分は遠からず死ぬのではないか。そんな思いを宿して演じよ。』

その後悩んでいた彼女は、怖いくらいに可笑しく、秋の空のようにポカンと晴れ、カラッとした笑いの後に底知れぬ闇のような闇。

 

 この久世さんからのアドバイスで、希林さんは、その後の達観した演技に繋がっていったのではと感じました。そして映像の中での希林さんの演技がありありと目に浮かんで来るようでした。

 

この部分を読んで、いつもそんなことを考えているわけではないけれど、「死は誰でも突然やって来るのだから悔いのない一日を送ろう。」って思いが今年は例年より強かったので共感しました。

 

この章で、他には、

 

「幸福だから感謝するのではない。感謝するから幸福なのだ。」(白隠禅師)

「世の中に慈悲も悪事もせぬ人はさぞや閻魔も困りたまはむ」(一休)

「育てない。手助けするだけだ。」(京都府高校校長)

 

等などの心に残る言葉も多々ありました。

 

また、希林さんの2番目の結婚相手だった内田裕也の自伝『俺はロッキンローラー』では、当時、ジョンレノンの妻・小野洋子について内田裕也が触れていて、

 

「付き合うのに非常に難しいタイプの人だよ。今は、俺より女房の方が気が合うみたいだね。宗教のこととか女性問題のことで。」と話していたという部分も興味深かったでした。

 

昔学生の頃、ビートルズファンクラブ主催のイベントで、希林さんがゲスト出演して、ジョンやヨーコとの交流について話してくれたのを懐かしく思い出しました。

 

 

また、『音楽に生きる』(中野雄・著)は、音楽プロデューサーである著者が、世界の著名な音楽家達との対談をまとめたものだそうですが、

 

本文中、希林さんが多く赤線を引かれていたのは、ウィーン国立歌劇場での日本人オペラ歌手アンネット・ストゥルナートとの対談だそうで、歌うことで大切なことも色々紹介されていました。

 

このアンネットさんは戦後大陸からの引揚者で非常に苦労して来たそうですが、歌で一番大事なのは呼吸法で、ウィーンでの大学ではまず腹部の解剖学から勉強させられるとか。オペラは特に腹筋使いそうですよね^^;

 

また、歌にはその人の生きざまが出るので、いい本やいい絵にたくさん触れ、政治にも興味を持ち感性を磨くことも大事だという点も参考になりました。

 

その他の書籍では、仏教関係のものも多かったり、希林さんは「心と身体」の関係にも強い関心を持たれていたことがよく分かりました。

死の直前に真摯に向き合っていたのが、不登校児の問題だったということも。

 

『一流の理由』(加藤浩次・著)の中での対談で、脳科学者・中野信子の、

 

「私達って、その場にいたら同調圧力があるから、学校とか会社が全てだと思いがちだけど、でも自分自身にとっての自分という存在は、その集団より大きい存在なんだと認知を変えるべきなんですよ。」

 

という言葉も心に残りました。

 

紹介されていた98冊の中では他にも、 『禅とジブリ』(鈴木敏夫・著)や、『神(サムシング・グレート)と見えない世界』(矢作直樹 村上和雄・著)等なども読んでみたいなと思いました。

 

 

最後に、ブログでの繋がりについても共通しているのではないかと思える文を、愛について書かれたこのプラトン哲学書『饗宴』NHKテレビテキスト)の解説で見つけました。

 

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このテキストは、最近、日本語教室のボランティア仲間から借りて読んだものですが、2013年にEテレの番組「100分de名著」で放送されたものです。

世界中の名著を紹介するこの番組は、私も時々見ている好きな番組です。

 

以下はこの時の解説者である納富信留さんの、テキスト最後の方から抜粋した言葉です。

 

一人と一人は、限られた人生の中で出会い別れていきます。

そこで出会う「私」と「あなた」とはいったいは何者でしょうか。

「私」とは、この肉体や名前・性格などをもつ人間のことだと思われるかもしれません。

しかし、「あなたと私が出会っている」という時、この肉体は指していないのです。

出会い、語りかけ、繋がっているのは、私自身とあなた自身、つまりあなたの「魂」と私の「魂」なのです。

そこで出会いが成立するのは、言葉を語るという営みにおいてです。

私達は、魂と魂の間で言葉を交わしながら、何か絶対的なものを愛し求め、共にこの人生を生きています。

そうして対話する言論が、愛する人間の哲学であり、私達はそうして芸術や文学や人生を生み出していくのです。

 

 

という文章が、深く心に残りました。

 

「魂と魂の繋がり」っていうとちょっと大げさかもしれませんが、限られた人生の中で、「言葉を語る」ことで通じ合ったり、自分とは異なる考えを知ったり、色々な世界が広がるブログ上での縁にも通じるものがあるなと感じました(^^)/