ジェシー・バックリーがシンガー役で主演ということで、この映画も公開されるのを楽しみにしていた作品だ。
実在の人物をモデルに、カントリー歌手を夢見るスコットランド・グラスゴーに住むシングルマザーの姿を描いた物語。
監督はトム・ハーパー。2018年制作イギリス映画。
ジェシー・バックリーは、『ジュディ 虹の彼方に』で、主役ジュディのロンドン公演でのマネージャー役を演じていて、この時も、とても感じの良い役どころで素敵な女優さんだと印象深かった。
今回の映画の魅力は、やはり何といってもこの主演ジェシー・バックリーの素晴らしい歌声に尽きると思う。
「ラスト5分、彼女の歌声にあなたはきっと涙する」と予告でもあったけれど、作品中に歌われる場面場面に適した歌詞やその歌声が、ラストだけでなくその都度静かに心に染み渡って来て、まさに魂を揺さぶられるような歌声だった。
ノラ・ジョーンズやジャニス・イアンにも声質が似ているような。
なんて歌が上手いのだと思ったら、バックリーさんは元々シンガーソングライターだったのだそうだ。
ジュディの時は、上品で清楚な女性マネージャーを演じていたけれど、この作品のローズ役では、冒頭いきなり刑務所から出所するシーンで始まり、軽犯罪で1年間収監されていたという設定で、アウトローな雰囲気いっぱいの女性を演じていて、ジュディの時とはガラッとイメージが違っていた。
でもその冒頭シーンから、ローズが歌うノリの良い軽快な曲「カントリー・ガール」(原曲はプライマル・スクリーム)がかかり、その時のスタイルもバリバリのロックミュージシャンという出で立ちでかっこいい。
目指すグラスゴーの実家には、母親が世話をしていてくれた可愛い二人の子供達が待っている。
ローズは資産家で家政婦の仕事をし、家族と夢の狭間で色々葛藤しながら、歌手になるチャンスをなんとか掴もうとする。
ローズが「カントリーは3コードで表現出来るの。」と、「3コードの真実」というような言葉を腕にタトゥで入れていたのも面白く、その意気込みを感じられた。
そのローズの歌の才能に感銘を受けて応援してくれる資産家スザンナ(ソフィー・オコネドー)の笑顔が始終とても素敵だったのと、厳しいながらも実はローズへの深い愛情が感じられる母親(ジュリー・ウォルターズ)が、娘に自分の過去を交え話すシーンもジーンと来た。
さすが存在感いっぱいの名女優二人という感じがした。
ジュリー・ウォルターズは、やはりイギリスが舞台の大好きな映画『リトル・ダンサー』にも出ていたっけ。
「グラスゴーのカントリー歌手なんてありえない。カントリーはナッシュビルだ。」と言うようなローズの台詞があったけれど、この作品の舞台であるグラスゴーは、過去に来日公演を見に行ったことがある、トラヴィスやプライマル・スクリームなど好きなバンドの出身地なので、そのグラスゴーの街並みなどの風景も興味津々で楽しめた。
アメリカ・ナッシュビルのシーンでは、ナッシュビルはカントリーの聖地であり、以前伝記映画で観たジョニー・キャッシュの博物館もあり、世界中からカントリー・ミュージシャンを夢見る人々が集まって来る地だというのが分かった。
ローズの目を通して、ナッシュビルは音楽が巷に溢れているとても活気のある街だと魅力を感じた。
ラストの感動のステージシーンでは、『オズの魔法使い』をオマージュしているような歌詞にもグッと来た。
「黄色いレンガの道」や「靴のかかとを3回」とか...
オズでの主人公ドロシーは、かかとを3回打ち鳴らして心からの望みを最後に叶える。
そこがこの映画のローズと繋がっているところも良かったなぁと、しみじみ感じながら帰路についた。
このジェシー・バックリーさんは、今公開されている同じく新作映画『ドクター・ドリトル』にも出演されているそうで、売れっ子なんですね~。