絵本の読み聞かせ仲間から誘われていた、朗読講習会に先日行ってみた。
今は芥川龍之介の『桃太郎』を教材にやっているとのことで、この作品は、朗読動画で聞け、ネットの「青空文庫」で読めるので、事前に予習して来てとの連絡があり読んでみた。
この芥川龍之介版『桃太郎』は知らなかったけど、皆が知っている昔話の『桃太郎』をパロディ風に変えていて面白かった。
芥川龍之介、こんな作品を書いていたとは。
物語の全文が読めるサイトの青空文庫はこちら↓
一般的な昔話と違った点を挙げていくと、
先ず、桃太郎が鬼ヶ島へ鬼の征伐に思い立った理由が、
「お爺さんやお婆さんのように、山だの川だの畑だのへ仕事に出るのが嫌だった。」からだそだ。
この桃太郎は怠け者だったのか。
しかも桃太郎を育てたお爺さんやお婆さんも、
「内心この腕白ものに愛想を尽かしていた時だったから、出陣の支度に必要なものは桃太郎の言いなりに持たせることにした。」そうだ。
鬼ヶ島へ向かう桃太郎が腰に下げたきびだんごに目を付けた犬が、「一つくれればお供する。」
と言ったことに対して、桃太郎はとっさにそろばんを取り出し「半分しかやらぬ。」とケチくさいことを言い、犬と押し問答になる。
その後犬の他にも、きびだんごの半分を餌食に、猿やキジも家来に従え、仲の悪い動物同士がいがみ合いながらやっと鬼ヶ島に到着する。
その鬼ヶ島は、極楽鳥のさえずる美しい天然の楽土であり、鬼たちは琴を弾いたり踊りを踊ったり、詩を歌ったり平和に暮らしていた。
鬼のお婆さんは孫の世話をしながら、
「お前達もいたずらをすると、人間の島へやってしまうよ。」
「人間の島では鬼は殺されてしまうのだ。」と、いい聞かせる。
そして、人間とはどうものかとの問いに対して、
「人間とは、角の生えない色白で気味の悪いもの。」
「欲深く、嫉妬深く、自惚れ強く、仲間同士殺し合うし、火はつけるし、泥棒はするし、手のつけようのないケダモノだよ。」と、孫達に説く。
桃太郎一行は到着した鬼ヶ島で、ありとあらゆる残虐行為をして、宝物と生き残った鬼の酋長の子供を人質に、意気揚々と国へ帰って行く。
その時鬼の酋長は桃太郎に、
「自分達は貴方様達にどんな無礼をしたのでしょうか?何故こんな酷い仕打ちを受けなければならなかったのでしょうかでしょうか?」
と、恐る恐る質問をする。
それに対しての桃太郎は、のらりくらりと答えになっていない説明を述べ、
「つべこべ言うなら、お前たちも皆殺しだ。」と脅す。
この後、桃太郎は幸福な一生を送ったわけではなく、人質の鬼の子や鬼ヶ島で生き残った鬼達の復讐に遭い、住まいを焼かれたり、ずっと命を狙われ続ける。
そして桃太郎は、
「どうも、鬼というものの執念深さには困ったものだ。」とため息をつく。
その間も、鬼たちは恋をするのも忘れ、鬼ヶ島の独立計画のため着々と準備を進める。
これを読み終えて、「こんな鬼にしたのは誰じゃ~!」
と思わず、テーブルをひっくり返しながら叫んでしまった。
というのはもちろん嘘だけれど、鬼は最初から悪い鬼だったわけではなく、一般的な昔話とは鬼と桃太郎に抱いたイメージが真逆で面白かった。
ネットサイトから読んだので、この作品の解説が知りたく調べてみたら、アマゾンの本書内容説明にこう記されていた。
大正期に活躍した「新思潮派」の作家、芥川竜之介の後期の小説。初出は「サンデー毎日」臨時増刊[毎日新聞社、1924(大正13)年]。「白葡萄」[春陽堂、1925(大正14)年]に収録。昔話「桃太郎」のパロディであるが、日本政府が中国を植民地化したことを訴える内容となっており、その政治性、時代性から初期プロレタリア小説と位置づける見方がある。
なるほど、大正13年のその時代、日本が中国を植民地化したことを訴えた物語だったのか。
言われてみれば、戦争の始まりに置き換えた話とも思えるし、歴史的に見てもこの地球上で色々似たようなことが起こったような。
☆ ☆ ☆
朗読講習会は約20年ほど前にも、市主催の講習会に参加したことがあり、その時も市在住の俳優さんが講師だったけれど、今回のサークル講師も女優経験のある方で、みっちり2時間有意義なレッスンだった。
最初はウォーミングアップの為の簡単なストレッチから始まり、ボイストレーニング。
これらの練習は、バンドで歌う時にも大いに役立ちそうだ。
それからこの『桃太郎』を段落ごとに順番に読んでいき、読み方指導を受けるという流れだった。
珍しい固有名詞や、言い回しなどの読み方やアクセントが難しかった。
講師によって違うようだけど、絵本の読み聞かせの場合は、台詞部分はあまり声色を使ってはいけないようだけど、朗読講習会では、劇のように役に成り切って出来るところが面白い。
朗読は楽しいし、活舌も良くなりそうなので、これからも参加出来る時はなるべく参加したいと思った。
今月の会は、開催出来るのかは分からないけれど。
こんなイメージだった昔話の『桃太郎』が
この作品では、すっかりこんなイメージに^^;
これは、以前新聞記事に載っていた漫画の『悪魔くん』(水木しげる・作)の1コマ。
今回この『桃太郎』を読んで、撮っておいたこの写真を思い出した。
『悪魔くん』もその名のイメージとは違い、世界平和を目指して戦う話だった。