物語の舞台は、第二次世界大戦下のドイツ。10歳の少年ジョジョは、空想上の友達であるアドルフ・ヒトラーの助けを借りて、青少年集団ヒトラーユーゲントの立派な兵士になろうと奮闘していた。しかし、心優しいジョジョは、訓練でウサギを殺すことができず、教官から〈ジョジョ・ラビット〉という不名誉なあだ名をつけられる。そんな中、ジョジョは母親と二人で暮らす家の隠し部屋に、ユダヤ人少女エルサが匿われていることに気づく。やがてジョジョは皮肉屋のアドルフの目を気にしながらも、強く勇敢なエルサに惹かれていく──。(公式サイトより)
公開前から観たかった映画『ジョジョ・ラビット』を昨日やっと観に行って来た。
前回の『フィッシャーマンズ・ソング』のように間を置かず、感動冷めやらぬうちに書き留めておかねば。
公開から約一月近く経っていたので、最寄の映画館ではもう夕方の回1回しか上映していなかったけど、昨日は祝日ということもありほぼ満席だった。
第92回アカデミー賞で、脚色賞を受賞した影響もあると思うけど。
ビートルズの「抱きしめたい」とデヴィット・ボウイの「ヒーローズ」の曲が使われているのは知っていたけれど、冒頭、いきなりその「抱きしめたい」(ドイツ語バージョン)がヒトラーに熱狂する群衆映像と共に流れ、このような映像と共に使われていたのか、とちょっと驚いた。
当時のヒトラーへの狂信的な支持者を、ビートルズに熱狂するファンになぞられているようなこのシーンは、ジョジョが立派な兵士を目指してヒトラーユーゲントに入団したての奮い立つような気分も表しているようだった。
ジョジョはその後、母親が匿っていたユダヤ人の少女エルサと出会い交流してことから、ジョジョのそれまで信じていた世界が大きく揺れ動いて行く。
このジョジョを演じた、ローマン・グリフィン・デイビスは、オーディションでこの役を射止めたそうだけど、だからこそなのか、その新鮮で純粋な演技力や澄んだ瞳にもその可愛い容姿と共にとても好感が持てた。
ジョジョの太っちょな親友も適役でこれまた可愛かった。
ジョジョの空想の友だちであるアドルフ・ヒトラーに扮したのは、この作品の脚本・監督であるタイカ・ワイティティ。俳優でもあるそうで、そのコミカルな演技も面白かった。
コメディタッチのヒトラー映画だと、『独裁者』や『帰って来たヒトラー』を思い出した。
そして、ジョジョの母親役を演じたスカーレット・ヨハンソンは、前回観た『マリッジ・ストーリー』での母親役以上の素晴らしい母親を演じていてその存在感に圧倒されっぱなしだった。
美しいのはもちろんのこと、温かく聡明で、凛々しく強く逞しく、ユーモアセンスに溢れていて。まさにパーフェクトな人間性の持ち主。
その母子で印象的だったのは、ダンスをするシーンと、また映像的にもとても美しいと感じたのは、二人で緑あふれる小道を自転車で走り抜けるシーンだ。
ここでかかっていた曲もこのシーンぴったりの郷愁をかきたてられるとてもいい曲だった。曲名を後で調べてみよう。
またこの部分では、スクリーンの半分から上部を小さく左端から右端にかけて自転車で移動する映像が、とてもセンス良く感じた。
スカーレット・ヨハンソンの靴も服装もいつもお洒落で洗礼されていて、とても印象的だった。
このシーンでも、赤いインナーの上に目の覚めるようなビビットなブルーのコートを羽織っていて、それが金髪にも似合っていてセンスいいなぁと感じた。
この青いコートとお洒落な靴が、終盤悲しいシーンのその象徴として登場するのだけど、だからのこそ目立つ色のコートだったのかなと後から思った。
青と言えば、母親が、洗脳されたヒトラーかぶれのジョジョに、本物の愛について優しく諭すシーンがあるのだけれど、愛とはお腹で蝶が舞うような感じだと話す。
その後、ジョジョの中にもたくさんの青い蝶が舞うようになるけれど、映画冒頭、抱きしめたい相手がヒトラーだったジョジョは、その頃から抱きしめたい対象が変化していったから「抱きしめたい」の曲を使った意味もあるのかなと感じた。
エルサも、ジョジョに本当の愛について話していた時、抱きしめたくなるほどの愛おしさと語っていたような。
また、ジョジョの教官役を演じたサム・ロックウェルの、終盤での人間性が滲み出るような演技にも泣かされた。
昔観た大好きな映画である『ライフ・イズ・ビューティフル』ラストでの父親のシーンにもオーバーラップするような美しいシーンだった。
泣かされたといえば、靴紐が上手に結べないジョジョが何度目かに結ぶあのシーンにも。
デヴィット・ボウイの「ヒーローズ」が流れる中での、心憎いくらい素敵だったのがラストでのダンスシーンだ。
エンドロール前には、エルサの恋人が好きだった詩人であるリルケのこの詩が…
全て経験せよ
美も恐怖も
生き続けよ
絶望が最後ではない
何て素敵な映画だったんだろう。
まだ2月だけれど、これから観るであろうたくさんの映画を入れても、きっと年間べスト3には入りそうだ。
子供にも、私のような血しぶきが飛び交うシーンが苦手な人間にも安心して観られ、
でも戦争の愚かさはしっかり描けている、コメディタッチの心温まる映画だと思う。
デヴィット・ボウイの「ヒーローズ」は私も大好きな曲で、来日公演を一度は見てみたかったけど残念だ。
この映画で流れていたドイツ語の、ベルリンの壁崩壊前にデヴィット・ボウイがベルリンの東西の壁際で歌った時のが、youtubeで探せばあるのかも知れないけれど、私が以前からお気に入りのこの映像をUPしておこうと思う('◇')ゞ