つるひめの日記

読書、映画、音楽、所属バンド等について日々の覚え書き。

台湾のアニメーション映画『幸福路のチー』

 

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読者登録をしている、そーこさんの旬感ブログ(syunkanmkrn.hatenablog.com)に、以前この映画のレビューがUPされていて、良さそうだなと思い先週末観に行って来た。

 

 東京アニメアワードフェスティバル2018のコンペティション部門(長編アニメーション)でグランプリに輝いた台湾のソン・シンイン監督作品のアニメ。

 

主人公のチーが、祖母の死を機に故郷の台北郊外の下町「幸福路」に戻り、幼い頃の思い出を振り返りながら自分の生き方を見つめ直して行くという物語。

 

懸命に勉強してアメリカに渡り仕事を得て結婚しても、様々な悩みは尽きなく、「あの日思い描いていた未来に、自分は立てているのか?」と、人生の岐路に迷っている姿は、チーと同年代の30代を問わずあらゆる年代の人に共感出来ると思う。

 

過去の子供時代の回想シーンを挟みながらストーリーが展開して行く。

絵の描写がとても素朴でシンプルで、日本のアニメを見慣れているせいか、ちょっと物足りなさを感じたけど、時々現れるチーの妄想であるカラフルな世界が奇想天外で面白い。

 

映画の冒頭、子供の頃のチーが家族と一緒に幸福路へ向かう途中、「幸福ってなに?」と訊くチーに、「たくさん食べて眠れることよ。」との母親の答えがとても印象的だった。

まさに、たくさん食べられて眠れることは、人間の元気の源であり幸せの原点だよなぁと改めて気付かされた。

 

子供の頃のチーは赤いスカート姿や家族描写といい、どこか『ちびまる子ちゃん』に似ている感じがしたけど、この映画全体を通しては、『この世界の片隅に』を思い出させるような、柔らかな色彩と優しく温かな雰囲気がとても良かった。

 

また『この世界の片隅に』で、声優を務めたのんの声が主人公すずにぴったりで評判になったように、チーの声優を担当したグイ・ルンメイさんの声もチーにぴったりで、物憂げで味わい深いその声をずっと聴いていたい気がした。

 

「幸福路」とは、台北郊外に実在する通りの名前だそうだけど、私も下町育ちなので、台湾の下町描写も日本と共通点もありどこか懐かしさを感じた。

チーが子供時代、友達と屋根の上で「ガッチャマン」の歌を元気に歌うシーンにも。

ガッチャマン、台湾でも放映されていたんだな~。

 

下町で似ているといっても、日本と台湾とでは国民が置かれた状況が随分違う。

70年代半ば、チーが小学校に入学してからの描写でも、今までの台湾語は禁止され、これからは北京語を使わなければいけないと教師から厳しく指導されるシーンがあり、終戦頃までは日本語も使っていた時代があっただろうから、台湾の人々の日常は言葉に翻弄されていた時代が長かったということが分かる。

映画では淡々と描いていたけど、馴染んだ言語を変えさせられるなんて自分の身に置き換えて考えてみても、さぞ大変だったろうと思う。

 

他にもチーが大学時代からの民主化運動や、台湾大地震の描写もあったので、台湾の歴史的背景がよく分かっているとより物語への理解が深まったのではと思った。

 

チーの両親も娘思いの愛すべき人達だけど、特に亡くなった祖母が子供の頃からのチーにとって大きな理解者で、「人と違うことが力なのよ。」とか、この映画の予告編でもあった「お前が何を信じるかで人生が決まる。」「心の目で見るんだよ。」との台詞が心に響いた。

 

また、年老いた母に認知症のような症状が出た時のチーの寄り添い方が、見習いたいくらいにあまりにも優しくて、そこもとても良い場面だった。

 


この作品は、新聞記者や写真家などの経歴を持つソン・シンイン監督の半自伝的な物語だそうで、映画化にあたり、経験のなかったアニメーションという手法を選択し、独力で資金集めに奔走して自らのアニメーションスタジオを設立したのだそうで、そのパワーにもびっくりだ。

 

エンドロールで、この映画のサポーター達の名前が列挙されていたけれど、クラウドファンディングで公開にこぎつけられたのも『この世界の片隅に』と共通しているなと思った。

地味な映画はなかなか資金が集まりにくいらしいけど、こういった映画ももっと注目されるといいなと感じた。

 

予告編でも少し流れていたけど、エンディングでの曲も静かな余韻を残す素敵な曲で、その癒される歌声と共に感涙だった♪

 

 

 (youtube.com )

 

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余談ですが、台湾は、『千と千尋の神隠し』を観てからは特に、その舞台にもなった九分含め行ってみたい国の一つですが、以前初めて行った群馬の伊香保温泉に、巨大な台湾の寺院があり驚いたので、台湾繋がりでちょっと紹介しておこうと思います。

 

伊香保温泉・水沢観音の直ぐそばにある「佛光山 法水寺」。

立派な新しい寺院で何だろうと立ち寄ってみたら、無料で自由に見学出来、案内の方も親切でした。総本山は台湾・高雄にあるそうで、予約すれば写経や座禅体験も出来るそうです。

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この 映画とは関係ありませんが、皆さんも機会があったら温泉帰りに立ち寄ってみては如何でしょうか('◇')ゞ