先日発表されたアカデミー賞作品賞など3冠を受賞した話題の『グリーンブック』を観に行って来た。ブログのお友達も次々観に行って熱い感想をUPされている。
舞台は1962年の黒人差別が激しかったアメリカ南部を演奏旅行する天才黒人ピアニストであるドクター・シャーリーと、その演奏旅行に雇われたイタリア系運転手兼用心棒のトニー・リップの友情物語。
グリーンブックとは当時黒人が安心して泊まれる宿泊所等の黒人専用のガイドブックだそうだ。
人種差別という重いテーマでもあるに関わらず、随所に笑いがちりばめられていて観終わった後も爽やかな温かい気分に包まれ、アカデミー賞受賞とは関係なくても本当に観て良かったと思える作品だった。
性格も正反対の二人が、その旅を通じて徐々に友情を育んでいく過程が楽しめた。
特に車を運転しながらトニーがフライドチキン等を素手でかぶり付いては窓の外に捨てるシーンがあるけど、最初は眉をひそめていたドクターも同じ行為をして笑い合ったり、トニーが奥さんへ書く手紙の指導をドクターがする場面が笑え、上映内でもクスクス笑いが広がった。
そのチキンのシーンでトニーが語っていた、「食べる時も笑う時も、何事も100パーセント全力でやれ」と父親から言われたエピソードで、彼のバイタリティある性格はその父親からの影響だと分かる。
その場面で流れるリトル・リチャードの『ルシール』。これはビートルズもカバーしていて先月もライブでやったので、おぉ!と思った。
そして、フライドチキンも食べたくなった。
家族への愛情が深くても、がさつな性格で初めは黒人への差別意識が強かったトニーも、気難しそうなドクターも、最初は魅力を感じなかったけど、話が進むにつれて打ち解け合う辺りから段々素敵な二人に見えて来る。特に孤高なドクターの、時々見せるようのなったシャイな笑顔が可愛かった。
そして後半、食事を取るために入った黒人がたくさんいるライブハウスでの、ドクターのピアノの心躍るセッション場面が、ドクターのソウルフルな演奏シーンと共に居合わせたお客の驚きと喜びも胸に迫って来て、本当に素敵だった。
そしてラストシーンでの、トニーの聡明な奥さんのチャーミングな一言✨
それに続くエンディングでの、実物のドクターとトニーの映像と共に、二人の友情がずっと続いたという解説に温かい気持ちに包まれた。
カーネギーホールの2階に住んでいて、ホワイトハウスでも演奏したこともあるドクターが何故、差別の色濃い南部での演奏ツアーを目論んだのか、その理由が後半明かされるがその理由にも感動だった。
そのシーンの時に演奏家仲間が話していた、南部の白人の前で公演した黒人はナットキングコールが初めてで、その時はステージから引きずり降ろされ、袋叩きにあったと言っていたが、本当にあったことだったのかと驚いた。
当時イタリア系の白人にも差別の描写があったのも、この映画を観て初めて分かった。人種差別は有色人種だけかと思っていた。
少し前にも、警官による黒人射殺などが原因の暴動が時々発生していたので、きっと当時のアメリカはこの映画よりもっともっと悲惨な状況だったと思うけど、この映画ではそこまでの酷い描写はない。
この監督のインタビュー新聞記事を昨日読んだけど、この映画で伝えたかったのは「希望」だそうだ。抜粋すると「肌の色ではなく人柄で評価する。映画の中の二人は、話すことで互いを知り共通する部分を見出していった。僕はそこに希望を感じる。変化するためにはまず話し合うことから始めなければならない。そうでないと平和なんてありえない。残念ながらあの頃とあまり変わっていないアメリカの、その愚かしさを見る人に感じてもらいたかった。」と語っていた。
最後に、私がこの映画で特に心に残った台詞は
「寂しい時は自ら行動しろ」このトニーの言葉に、ドクターはラストシーンで自ら行動したんだと分かった。
「勇気ある行動が人の心を動かす」「暴力では勝てない。尊厳を保つことがあなたを勝者にする」とのドクターの言葉。
そして、ドクター自身の複雑なマイノリティ発言に対してのトニーが言った「俺はニューヨークのクラブでずっと働いてきたんだ。世界が複雑なのはよく分かっている」っていうような言葉にも、トニーの人間の大きさが表れているように思った。
他にももっとあったように思うけど、何しろ忘れるのが早いもんで(笑)